こうした状況では、今回の訪日に限って言えば、米国は日本とのFTA協議を急ぐムードにはないと思われる。何よりも米国経済は7-9月期も前期比年率3.0%成長と4-6月期の3.1%に続いて2期連続の3%台成長を達成し、主要株価指数が連日最高値を更新するなど、焦って通商交渉をまとめる必要は全くない状況にある。

 だが、安倍首相も安心ばかりしてはいられない。

 総選挙で「国難」とまで言い切った北朝鮮問題に関して日本に打てる策はほとんどなく、米国の軍事力と対中外交戦略に依存するしかない現状では、トランプ大統領に対して有効なカードは一枚も持っていないからだ。

 国内では「一強」と呼ばれる安倍首相も、トランプ大統領が「貿易赤字縮小を」と一言唱えれば、何らかの譲歩策を差し出さざるを得ない。

 ちなみに今年4月18日に始まった「日米経済対話」では、麻生副総理兼財務相とペンス副大統領が「自由で公正なルールに基づく貿易・投資」の必要性を確認したものの、10月16日に行われた第2回会合ではインフラ整備、エネルギー分野やデジタル・エコノミー分野での連携などを謳っただけで、FTAには表向きは触れずじまいだった。

 だが舞台裏では、ペンス副大統領がFTA交渉開始を強く迫ったとも言われており、トランプ大統領が首脳会談において具体的に言及する可能性もないとは言えない。

 米国側も、来年秋の中間選挙が徐々に視野に入って来ることから、来年上半期までには通商問題で一定の成果を挙げたいとの思いが強い筈だ。

自動車、牛肉、医薬品は関心事項
時間をかけて成果求める

 昨今の動向からすれば、米国が強く要求して来るのは自動車の非関税障壁撤廃、牛肉市場の完全開放、医薬品の価格改定制度見直し、といった項目だろう。

 特に牛肉に関しては、既に日本は豪州と経済連携協定(EPA)を締結済みで、関税が段階的に引き下げられる見通しとなっており、米国には出遅れ感がある。

 自動車に関しては「日本には米国車がほとんど走っていない」と何度も不満を口にしてきたトランプ大統領が、今回の訪日でも、そんな発言を繰り返すかもしれない。