欧州債務問題に対する懸念は依然として強いですが、その一方で、米国の景気不安後退に伴うリスク回帰が続いています。

 よって、欧州危機によるユーロ安は、懸念されているほど広がらないのではないでしょうか?(「『ユーロ本位制』のリスク回避は終わった!イタリア・ショックの動揺も一時的に終わる」など参照)。

 ちなみに、ユーロには年末に下がりにくいという経験則もあり、それからすると、11月のユーロは1.36ドルを大きく下回らない見通しになります。

 今回は、このようなことについてご説明したいと思います。

経験則どおりならば、11月のユーロは急落しない

 まずは「資料1」をご覧ください。11月、12月と、年末にかけての為替相場には、ユーロ高・米ドル安になりやすく、ユーロ安になっても小幅にとどまるという傾向があります。

 そのような経験則からすると、11月のユーロ/米ドルは1.38ドルで取引をスタートしたので、月末終値はそれよりもユーロ高となっているか、ユーロ安となっても、1.38ドルを大きくユーロが下回らないといった見通しになります。

資料1

 

 今のところ、今年の11月についても、ユーロは経験則どおりの展開になると見ています。一般的に見れば、欧州債務問題への懸念が強い状況は続いていますが、その割りには、あまりユーロ安は進まないと考えています。

 ただ、昨年の11月は、この経験則が見事に裏切られ、ユーロは一段安へと向かいました。アイルランドの債務不安などをきっかけに「ユーロ危機第2幕」の様相となり、ユーロ安・米ドル高が年末に向けて大きく進んだのです。

 さて、今年の場合、そのような昨年の二の舞となることは考えられないでしょうか?

今年の11月はすでに大幅なユーロ売りに傾斜している

 ユーロを取り巻くいくつかのデータを見ると、昨年と今年では、大きく異なった状況にあります。その1つがポジションに関するデータです。

 CFTC統計によると、昨年の場合、ユーロは10月まで4万枚を超える買い越しとなっていました。これに対して、「資料2」を見ると、今年は11月初めの時点でも6万枚を超える売り越しとなっていました。

資料2

 ちなみに、米ドルのポジションを見ると、昨年は10月にかけて大幅な売り越しだったのが、「資料3」のように、今年は反対に買い越しとなっていました。

 要するに、昨年は11月に入るところで、マーケットはユーロ買い・米ドル売りに傾斜していて、そのような状況下でアイルランド不安が起こったため、ユーロ売り・米ドル買いへと逆流し、それが拡大する中で、経験則とは正反対のユーロ急落になったということでしょう。

資料3

 それに対して、今年はこの11月に入るところで、すでにマーケットは大幅なユーロ売りに傾斜していました。

 欧州債務問題がくすぶる中、ユーロのリスクには引き続き警戒が必要ですが、それでもユーロ売りがさらに拡大することになるのでしょうか?

 そういった中では、経験則どおりに、この11月はユーロ高となるか、ユーロ安となっても小幅にとどまる可能性が高いと私は思っています。

米国株が崩れないかぎり、ユーロもそれほど下がらない

 そうは行っても、私も、ユーロが大幅に上がるような気はしません。

 ただ、ギリシャやイタリアなどの財政問題が大きく報道され、欧州債務危機への世界的な関心がかなり高い割りには、意外にも、ユーロは目先でさほど下がらないと考えています。

 このように考えるもう1つの大きな理由が、次のページの「資料4」です。

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