プロ野球の試合が行なわれる球場では、打席に立つ選手の打率、本塁打、打点という主だった数字をオーロラビジョンに表示する。開幕直後はともかく、1か月が過ぎても、2か月が過ぎても数字が伸びてこないと、どうしても打席に入る際に気が滅入ってくる。
対戦相手も、はじめのうちは「森野がこのまま終わるわけがない」と思っているから、場面によっては四球で勝負を避けたりするのだが、次第にオーロラビジョンに表示されている数字を信用するようになってくるのだ。
つまり、一軍に昇格してきたばかりの投手まで、「あの(高くない)打率なら、俺も森野さんを抑えられるんじゃないか」と考え、思い切ったボールを投げてきたりする。相手が大胆に攻めてくれば、当然、森野は対処にてこずるだろう。
そうした、さまざまな要素が悪循環となり、本当にわずかの違いなのだが、打撃を小さくしてしまったという印象だ。私も森野に「数字とは闘うな」と助言したが、打席に向かう際にはどうしてもオーロラビジョンを見てしまうものだろう。