歳出はどこまで削ることができるだろうか

 次に、歳出サイドを考えてみる。ここでも現在の政府が戦後、最優秀の政府であると仮定して、ムダな予算は果断に切るものと仮定する。今年の歳出規模は、補正予算(主として東日本大震災対策)を除いて年初予算で考えると約92兆円である。このうち、国債費と地方交付税等(合わせて約38兆円)は、右から左に流れていってしまうので、野田首相(と国会)が直ちに切り込むことのできる予算は、実は残りの54兆円でしかない。

 最大の支出項目である社会保障費の29兆円をいくら削減できるか、高齢化によって毎年1~2兆円の自然増が見込まれていることを考え合わせると、削減は容易なことではないと想像されるが、それでも100人の聴衆がいれば、10人近くは2割程度の削減ができるのではないかと手を挙げる。最大値を取れば、5~6兆円の削減となる。

 次は、文教費の6兆円である。ここを削れば、その分親の負担(教育費)が増す。それでもやはり2割くらいの削減が可能だと思う人は、ごく少数はいる。最大値で1兆円の削減となる。同様に防衛費の5兆円についても、1兆円は削減できるという少数意見が寄せられる(むしろ、増やすべきだと言う意見も拮抗するが)。

 公共事業の5兆円については、かなり意見が分かれる。景気対策上、削れないという人がどちらかと言えば多いが、ムダを省けば4割近くは削れるという人もいる。最大で2兆円の削減である。残りの9兆円についても、2割カットできるとすれば、2兆円近くが削減できることになる。このようにして、会場の皆さんに積み上げ計算をしてもらったら、92兆円の歳出を最大限カットした場合は、80兆円前後まで削減できるということになった。