日・米・欧の中では、
日本の未来がもっとも明るい

 講演会等の場で聴衆の皆さんと意見交換をしていると、わが国の将来に対する悲観論や閉塞感が強いことに改めて驚かされる。私見では、発展著しいBRICS等の新興国を除いて、先進国、すなわち、日・米・欧の3極の中で考えれば、日本が一番安心できると考えていいと思われる。

 まず、短期的に述べれば、来年度の経済成長率は、ギリシャをはじめとする南欧の債務問題に苦しむ欧州(EU)や、家計のバランスシート調整が長引いている米国に比べて、復興需要が生じているわが国が一番高い成長を示すのではないか。

 中・長期的に述べれば、欧州(EU)の危機は1つの中央銀行に対して17の政府・財務省が対置する構造問題に起因するものであり、徐々に政府間の統合が進むとしても、優に10年単位の時間を要するばかりではなく、ギリシャなどが離脱するという「不確実性」シナリオも依然として捨てきれないものがある。アメリカは欧州に比べれば「不確実性」シナリオは、相当低いと見られるものの、大統領選挙の結果如何によっては、また戦争(イラン攻撃等)を始めるリスクも決してゼロではないように見える。

 これに対して、わが国には「不確実性」シナリオが生じる余地がほとんどないように思われる。わが国社会が抱える最大の構造問題は少子高齢化と財政再建である。どちらも大変な問題ではあるが、少なくとも「不確実性」はなく、どちらもある程度の予測は可能である。予測が可能であれば、また対策も立てやすい。

 少子高齢化に対しては、たとえば前にも述べたシラク3原則に象徴されるようなフランスの政策をそのまま真似ればいい。財政再建については、社会保障・税一体改革成案を着実に推し進め、消費税率を段階的に上げていけば、それほど深刻な事態に陥る恐れは少ないものと思われる。人間にとって一番始末が悪いのは、常識からかけ離れた「不確実性」が生じることであり、将来が予測できないことである。なぜなら予測できないことに対しては、およそ手の打ちようがないからである。

 このように考えれば、何もわが国の将来に対して必要以上に悲観的になる必要はないのではないか。ふと、ある外国人の友人の言葉を思い出した。「日本は、メディアが数字とデータで現在の問題を丁寧に説明しさえすれば、もともと市民の意識レベルが高いので、市民は正しい判断を十分下せると思う。あとは、政治家がほんの少しばかり勇気を持って信念を貫けば、未来は明るいのではないか」と。


(文中、意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)