商品の水漏れを伝えたくて株を買う消費者
朝倉:昔、とある上場企業の社外取締役の方から「ええか、俺たちが株主総会のことを何と呼んでいるか知ってるか?『被害者集会』って呼ぶねんで」と言われたことがありますよ。「年金をやり繰りしてあんたの会社の株を買ったら株価がこんなにも下がってしまった、どないすんねん」っていう被害者の苦情を受け付ける場だと。
ひどいこと言うもんだな~と思いましたが、確かに業績不振の会社であればそういったやりとりがされていますよね。
小林:あるメーカーの総会で、自分が買った商品が水漏れしたってことを直接経営陣に言いたくて株を買ったっていう人がいたっていう話も聞いたことありますよ。
村上:経営者にとっての株主のイメージって、株主総会のイメージに引っ張られてるのかな。そのせいで「株主イコール面倒くさい⇒面倒くさいことに時間は使いたくない⇒総会だけで十分だからIRなんかに時間使いたくない」となってしまっているんじゃないかと。
以前にも話したように、本当は上場した時の一番のアップサイドって経験豊富な投資家と話せることなのに、それが一番の苦痛になっているのかもしれない。だとすると、そのギャップはなんとも悲しい話ですね。
朝倉:会社が絶不調な時の株主総会って確かに「被害者集会」然とした雰囲気があるのだけど、逆に不振期を脱するとこうした雰囲気が一気に変わる。ゲーム会社だったら、「こういう企画やったらええんちゃうか」とか、「こういうイベントやったほうがいい」なんてアイデア大会になってしまうんですよね。これが本当に株主総会のあるべき姿なのかと思うと、確かにちょっと考えてしまいます。
経営者も投資家も、もう少しお互いの視点に対する理解を深めて、株主総会がもう少し実のある議論の場になれば理想なんですけどね。実際、非上場企業の規模の小さい株主総会であれば、そういった場として機能していることもあるわけですから。
*本記事は、株式公開後も精力的に発展を目指す“ポストIPO・スタートアップ”を応援するシニフィアンのオウンドメディア「Signifiant Style」で2017年9月23日に掲載された内容です。
兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。
村上 誠典 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県姫路市出身。東京大学にて小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学に関わる。同大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間に渡り日欧米・新興国等の多様なステージ・文化の企業に関わる。IT・通信・インターネット・メディアや民生・総合電機を中心に幅広い業界の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。
小林 賢治 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県加古川市出身。東京大学大学院人文社会系研究科美学藝術学にて「西洋音楽における演奏」を研究。在学中にオーケストラを創設し、自らもフルート奏者として活動。卒業後、株式会社コーポレイトディレクションに入社し経営コンサルティングに従事。その後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、取締役・執行役員としてソーシャルゲーム事業、海外展開、人事、経営企画・IRなど、事業部門からコーポレートまで幅広い領域を統括する。