横須賀市で目を引く事業は、4年前に同市が発行した啓発冊子「最後までおうちで暮らそう」と題した、在宅療養のガイドブックである。

 リビングウィルをはじめとした終末期の解説や日本尊厳死協会のホームページのアドレスなど具体的に「死」を真正面から扱った内容だ。なかで、「救急車を呼ぶのは『救命措置をしてほしい』こと」ときちんと記し、医療の在り方についても「病院医療は治療のため、在宅医療は生活を支えるため」と明言している。

「とりあえず病院」「入院すれば安心」という風潮がいまだに強い中で、これだけはっきりと在宅医療の優位性を堂々と断言するのはたいしたものだ。

 もちろん、市内で在宅医療を手掛ける診療所の一覧も表記されており、市民には実に心強い28ページの冊子。文字通り「在宅死へのガイドブック」である。人口40万人、1万6千世帯の同市。この冊子は1万部も発行しており、医療、介護関係者だけでなく住民にも配布されている。

 この3月には第二弾のガイドブック、「ときどき入院・入所 ほぼ在宅」を発行した。ショートステイやデイサービスなど介護保険サービスを事細かに紹介している。

 横須賀市は2011年から在宅療養連携推進事業に着手し、医療や介護、それに市職員19人で構成する「在宅療養連携会議」を発足させて多職種の交流を深めている。同会議が退院前カンファレンスシートの作成や市民向けシンポジウムなどを開催してきた。市職員が町内会などで「出前トーク」を年間10回ほど開いて在宅療養を説くなど行政の熱意は相当なものだ。

 こうした啓発活動と多くの訪問診療医の取り組みが在宅死の浸透につながっているようだ。

自宅で看取る訪問診療所「わたクリニック」の存在

 では、在宅死率が中核都市以上で全国トップに立った東京都葛飾区はどうか。同区では「在宅医療への特別な取り組みはない」と話しており、横須賀市とは様相が異なるようだ。

 そこで、在宅医療を手掛ける診療所の動向を調べてみる。全国の在宅医療を手掛ける診療所が厚生省の出先機関である各地域厚生局に活動報告書を提出している。その最新のデータを朝日新聞出版が「週刊朝日MOOK さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん」として発行した。発行日は11月30日。