店内に流れる穏やかな空気と出汁のきいた鴨鍋
でれきばこのままずっと蕎麦屋酒を楽しみたい

 鍋から上がった豊かな鴨肉と出し汁が滲みた葱をほおばりながら、宮下さんの思いを聞く。 

メインの鴨鍋。葱は予め焼きを入れ、人参も茹でてある。肉をしゃぶしゃぶのように軽く鍋に潜らせて椀に盛ってくれる。鴨肉はやわらかいく肉の甘みが口中に広がる。

「この蕎麦屋を拠点にして、小さくてもいいからコミュニティを作りたい」。昔のような近所の付き合いはなくなったが、それでも何十年ぶりに見知った人が訪ねてきてくれるという。その知り合いを訪ねてまたその知り合いが来る。店を中心に人の輪が再生されていく。

 店は宮下さんの人柄を映したように、穏やかな空気が支配して、居心地がいい。できたら、このままずっと蕎麦屋酒を楽しんでいたいと思えるはずだ。

”ゆっくり、生きよう”――。団塊の世代が憧れてきたライフワードを今、宮下さんが、この店のコンセプトにして客を迎えている。下目黒の隠れ家にはビジネスマンの心を癒す、凝縮された時間があった。

「紫仙庵」
●営業案内

・住所 東京都目黒区下目黒6-6-3
・電話 03-3712-8555
・営業時間 11:45~売り切れ仕舞い 18:00~22:00 (予約優先) 定休日・月、火(火曜はそば打ち教室開催)
●予算:2000~6000円
●HPhttp://www.shisenan.com/
おすすめ:十割蕎麦せいろや韃靼蕎麦(共に950円)もいいが、はんぺん蕎麦(1500円)のはんぺんの大きさが見もの。肴は大きな玉ねぎに模したさつま揚げの盛り合わせが面白い。合鴨牛蒡巻きロースト(950円)も人気がある。
酒・料理:酒は九平次、水芭蕉、鳳凰美田など20銘柄以上が用意されており、全国を歩いた亭主の経験が垣間見える。接待には鴨鍋コース(5000円・税抜き)や鯛の塩釜コース(7000円程度・時価で変動)をぜひオーダーしてみたい。
訪問:4人程度の会食や接待はお座敷指定で。座持ちがして楽しい。
地図こちら

 


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