「権限委譲」を「責任逃れ」の言い訳にするな
その後も、似たような経験を繰り返したので、私は、「3現」を体感しないまま何かを決断をすることが恐くてならなくなりました。職位が上がるほど重要な決断を迫られるようになるにもかかわらず、現場から距離が離れるのだから当然のことです。
だから、私は、社長室に閉じこもって、現場を“遠隔操作”できると信じている社長のことが理解できない。もちろん、彼らはこう言うでしょう。「現場にはそれぞれの専門家がいるのだし、トップである私が現場に足を踏み入れるべきではない。私は現場に権限委譲しているのだ」と。しかし、私は、それは「権限委譲」を言い訳にした「責任逃れ」である可能性が高いと思うのです。
たしかに、権限委譲は重要です。お客様や市場のことを最もよく理解しているのは現場。現場から遠く離れた社長よりも、彼らの判断のほうが正解である可能性は高いからです。むしろ、よくわかっていない社長が事細かに注文をつければ、現場のモチベーションを下げることになるでしょう。
そもそも、ブリヂストンのように全世界に拠点があり、14万人超の従業員が働いている会社では、現場に権限委譲をすることなくして組織を機能させることは不可能。だから、私は積極的に権限委譲すべきだと考えています。