自分で自分に与える精神的報酬:内発的動機づけ
外発的動機づけは、他者が与えることをやめると、急速にしぼんでしまうヤル気です。
そうさせまいと、経営者やリーダーが外発的動機づけの強化に走っても、おのずと限界というものがあるでしょう。
与える側も、与え続けることにエネルギーを奪われ過ぎて、疲れ果ててしまいます。そこで、もう一つ、「内発的」という別の種類の動機づけが必要になります。
これは、「その目標を達成することは、自分にとってものすごく意味あることだ」という納得感や、「自分の役割として、どうしても達成せねばならぬ目標だ」という責任感を自分の中で創り出す行為です。
女子マネージャーのみなみちゃんの「野球部を甲子園に連れていく」という強い決意の伴った目標は、こうした納得感や責任感を自ら育んだ結果です。
では、どのような育み方をしたのでしょうか。それは『もしドラ』の物語を読んでのお楽しみ、ということにいたしましょう。
内発的動機づけは、納得感や責任感だけに限りません。目標達成プロセスで、「あっ、そうだったのか!」という気づきや「やったぁ~」という達成感を味わうことも内発的動機づけの一つです。
さらには、チャレンジ目標の達成活動に本気になって取り組むと、「仕事に自信ができた。自分は仕事ができる人間だ」という「自己成長の手応え」も得られます。これもまた、内発的動機づけの一つです。
他者にできることは「支援」のみ
このように、内発的動機づけは「自分で自分に与える精神的報酬」によってヤル気を出す世界であり、動機づけの主導権は当事者が握っています。
他者にできることは「支援」です。
たとえば、『もしドラ』には、「お見舞い面談(病気で入院したマネージャーがお見舞いに来た部員と野球部のあり方などを話し合う)」という方法で、マネージャーが野球部員一人ひとりの悩みや欲求、あるいは価値観(自分が大切にしている生きざま)を聴き出す場面が出てきます。
面談の目的は、リーダーが、メンバーのニーズに応えた働きかけをするための「ニーズの収集」ですが、私は読みながら、これはメンバーにとっても意味ある面談なのだと直感しました。
おそらく、メンバーはリーダーの質問に答えながら、無意識の自問自答をするでしょう。「自分のやりたいことは何なのか」、「今まで、何に価値を置いて生きてきたのだろうか」と。
そして、自分の欲求や価値観に照らして、「今、自分は何をなすべきか?」と思いを膨らます人も稀ではないと思います。
ああ、こういう面談をすることも、内発的動機づけの支援行動の一つなのだ。そんな思いを巡らしながら、その場面を何回も読みました。