本連載もいよいよ最終回。6割の調査データをもとに結論を出す、何に対しても仮説をつくる習慣を持つ、上司にあなたの考え方を「見える化」しておくなど、前回に続き、スピードと結果を両立させるための仕事術のコツをお伝えして締めくくりとしたい。
行き詰まったらすぐに隣の人に聞く
事実を調べてみた、アナロジーも思いつく限りのことを考えてみたが、でも答えがわからないということもある。
こうした場合には、すぐに誰かに聞くことだ。それが、結果にたどりつくための早道である。
「灯台もと暗し」で、実は隣の人が答えを持っているというケースはよくあることだ。だから、わからなかったら、それを隠さず、ちょっと大きな声で「わからないなー。どうしたらいいかなー」と言ってみるのがいい。
一番いけないのは、「わからない」ということが恥ずかしくて、黙って一人で抱えていること。これをやってしまうと、周りの人も上司もあなたの仕事が順調に進んでいるものと錯覚してしまう。
こうして、時間がたっていくと、ある日、上司から、「あれの結果見せてくれる」と言ってくる。
「すみません。あの情報がとれなくて、まだ結果が出ません」などと答えているようではダメ。もうあなたは「結果が出ない人」に上司の頭の中で分類されている。
こんなことになると、上司の頭の中で、「結果が出ない人」の分類から、「結果を出す人」の分類に脱出するには、おそらく3回ぐらい続けて、タイムリーに答えを出し続けないと無理だ。
多くの人が、周りの人に聞かずに自分で抱え込んでしまうのは、「自分がわからないのに、身近に答えを持っている人がいるはずがない」と思い込んでいるからだ。
確かに、それはそうかも知れない。
でも、いきなり答えを持っている人を見つけられなくても、答えを持っている人を知っている人を見つけられれば、それで十分。人から人へとどんどんたどっていけば、いつか本当に答えを持っている人にたどりつける。
「わからなかったら、わからないと騒ぐ」 そして、恥ずかしがらず隣の人にどんどん聞く。これをぜひ皆さんの習慣にしてほしい。
調査は6割の結果で満足する
こうして事実や情報を求めて調査活動を行い、一刻も早く結果にたどりつこうとするのであるが、ここで、それをストップさせてしまうもう一つの要因が「完璧主義」である。
何事にも完璧を求めるのは、美しいことである。
だが、ビジネスの世界で完璧を求めるのは不可能だ。ビジネスの環境、消費者の嗜好は一時も休まず変わっていく。
競合会社は新しい戦略をどんどん打ってくる、世界のどこかで経済状況が激変すると、その変化は止まることを知らない。ある一瞬は完璧だと思ったことでも、次の一瞬にはもう古い。そんな状況だから、完璧を求めても意味がないのである。
完璧よりもスピードこそが大事ということだ。
この点を学校の勉強が得意だった人は誤解し、完璧な答えを時間をかけて探そうとする。 だが、ビジネスの世界は「生き馬の目を抜く世界」だから、それでは遅すぎる。学校の勉強が得意だった人は、この点をよく理解して考え方を180度転換しないと、ビジネスの世界では、単なる仕事の遅い人になってしまう危険がある。
だから、調査で事実やデータを探すにしても、完璧を求める必要はない。自分でたぶん「こっちだな」と思える状況に達することができれば、そこで調査を終えていいのである。私の感覚では、6割確信が持てればそれでよいと考えている。
6割というと、ずいぶん低いなと思われる方も多いに違いない。
でも、人間、特に日本人は、完璧志向が強いから、6割と思ったときには、客観的には8割に達していると思うので、こう書いている。皆さんもこれぐらいのスピード感と大雑把さを持って、仕事を進めていっていただきたい。
それから、もう一つ心にとどめておいてもらいたいことは、こうして調査を進めていって、事実を突き詰めようとしても、事実は一義的に明らかにはならないということだ。 事実は捉え方によって二面性がある。表と裏から説明がつくのである。それを表か、裏かを明らかにするために、時間をかけて調査をしても無駄ということがよくある。