人と真摯に向き合うことで、
「相場観」が養われる

高野:三輪さんは、バランス感覚と「相場観」にすぐれた方だと思うんです。こんな人は、なかなかいません。三輪さんのような方が大勢いたら、ホテル業界は変わるでしょう。

三輪:「相場観」ですか? それは、「先を読む」ということですか?

高野:「いま、この世の中で必要とされているものは何だろうな?」「人が生きていく中で、一番苦しいことは何だろうな?」「苦しい人にかけてあげられる言葉は何だろうな?」「いま、足りないものは何だろうな?」といったことを感じられるのは、「相場観」があるからだと僕は思っているんです。目の前のことに真面目に向き合ってきた結果、「半歩先」を感じ取れるようになったのでしょう。

三輪:あまり意識したことはなかったですね。「困っている人は見すごせない」という想いが強かっただけで。

高野:三輪さんの場合は、「人間観」という言葉に置き換えることができるかもしれません。三輪さんは、人間と向き合い、人間を学んだ人なんですよ。ご本人が意識していないのは、「深層筋」として身についているからですよ、きっと。

三輪:本当に先を読めるといいのですが、自分がこの先どうしたいのか、あまり考えたことはないんです。「“歌舞伎町のジャンヌ・ダルク”は不滅です!」とは思っているのですが……(笑)。先ほど高野さんは、私に「使命がある」とおっしゃってくださいましたが、使命があるとしたら、これからの私には、どんな使命が待っているのでしょう? 

高野:三輪さんがやることは、ただ一つです。

三輪:何ですか?

高野:いつか、ホテルをつくってみてはいかがですか? 三輪さんがつくるホテルは、集まる人すべてが幸せを感じるホテルになるはずです。宿泊客も、スタッフも、地域の人も、みんなが幸せになれる「夢のホテル」をつくってほしいですね。

三輪:ホテルを、ですか? 私が?

高野:これからの三輪さんは、どんどん視点が変わっていくと思います。“歌舞伎町のジャンヌ・ダルク”は、サナギから蝶へ脱皮するんです!

三輪:サナギから蝶へ!

高野:蝶っていうと、なんだか歌舞伎町っぽいでしょ(笑)。サナギは殻の中に閉じこもっているだけ。でも蝶は、飛んでいけるじゃないですか。羽がついて飛ぶことができれば、目線が変わってくるわけです。歌舞伎町を出た三輪さんを、今度は「日本」が放っておかないでしょう。「日本」が放っておかなくなると、5年後には「世界」が放っておかなくなる。すると、どうなるか……。

三輪:どうなるのですか?

高野:「国連」に招かれるんです! 三輪さんが国連で演説しているシーンが僕にはイメージできます。サナギから蝶への変化は、すでに始まっているのかもしれませんよ(笑)。(連載おわり)


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人とホスピタリティ研究所所長。前ザ・リッツ・カールトン・ホテル日本支社長。1953年長野県戸隠生まれ。ホテルスクール卒業後、単身アメリカに渡り、20年間、ヒルトン、プラザホテルなどでホテルマンとして活躍。90年にはリッツ・カールトンの創業メンバーとともに開業に尽力。94年以降、日本支社長として、大阪と東京の開業をサポート。日本にリッツ・カールトンブランドを根づかせる。日本全国から企業研修、講演依頼があとを絶たない。

 


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