それは、上司が“責任者”だからです。組織の中では、上司は、部下に対して自分の指示を守らせる権限を有します。なぜなら、その代わりに、部下が上司の指示を守った上で、チームが負ければ、それは全て上司の責任になるからです。

 ですから、上司と部下の関係において、発せられる内容は「指示」であって、「お願い」でもなければ「リクエスト」でもないのです。

「お願い」や「リクエスト」が成立するのは
明確な上下がない関係

 そもそも「お願い」や「リクエスト」が成立するのは、「友達関係」や「取引先」などの明確な責任による上下がない関係です。

 そして、「お願い」や「リクエスト」は上下がない関係においてなされますから、実行するからどうかの選択権は、「お願い」や「リクエスト」された側に移ることになります。

 A課長は部下に対して「指示」していたつもりが、「お願い」や「リクエスト」という言葉を使ってしまっていたので、部下側は、実行の選択権が自分たちにあるんだと勘違いをしてしまっていたのです。選択権は部下の方にあるわけですから、「指示をしっかり聞かない」「言ったことをやらない」状態が発生して当然です。

 A課長は、「偉そうにしたくない」という理由で、「指示」をせずに、「お願い」や「リクエスト」という言葉を使うようになっていました。

 しかし、実は、A課長が「お願い」や「リクエスト」という言葉を使う理由は他にもありました。むしろ、こちらの方が主な理由と言ってもいいと思います。そして、これは、多くの「偉そうにしたくない」上司の皆さんに当てはまることと言えます。

 それは、「指揮命令者としての“責任”から逃げたい」という理由です。

 前述した通り、指揮命令者として「指示」した場合、その指揮命令によってチームが負けた場合は、明確に指揮命令者の責任になります。そして、多くの上司は、この責任を明確にしたくないという思考から、明確な「指示」ではなく、「お願い」や「リクエスト」をするのです。

「お願い」や「リクエスト」をすると、実行するかどうかの選択権は部下に移りますから、負けた時の責任も分散されるように感じるからです。

 私は、A課長に言いました。