最大の壁は音声認識
試作を重ね課題をクリア

 開発に当たってはロボットの門外漢であることが前例にとらわれない技術の取捨選択を可能にした。

 EMIEW2までは技術の粋を集めた“象徴的なロボット”であり、1台当たりのコストは「ハイグレードな高級車ぐらい」。実用性に乏しかった。

 馬場は倒立振子(電動立ち乗り二輪車「セグウェイ」に使われる技術で体重を前にかけると前進する仕組み)をやめ、四輪による移動を採用した。現実的な価格にするため、妥協すべきところは割り切ってスペックを落としたのだ。

 最大の課題は音声認識だった。雑音がある中でも人の声を聞き取れなければ会話にならない。

 馬場はロボット開発者として空港を訪れたときにがくぜんとしたという。「利用者としては気にならなかったが、あらためて聞いてみるとアナウンスや雑音が反響していた。こんなにうるさいのかと暗たんたる気持ちになった」。

 実際、音声認識は歴代の開発者の頭痛の種だった。

 博覧会での初代EMIEWのデモで冷や汗をかいたという技術者は、「政治家など要人を相手にするときに限ってうまくいかなかった」と苦笑する。

 人とロボットの会話は容易ではない。ましてEMIEW3には業務用ロボットとして通用する対話能力が求められる。

 その上、空港などで迷っている人に近づいて「何かお困りでしょうか?」と声を掛けるのが特長だ。自分から話し掛けた以上、相手の言葉を聞き取れず会話が成り立たないということは許されない。

 これまで空港、家電量販店、行政窓口などで実証試験をしてきたが、少なからずトラブルがあった。

 試験で失態を演じると実証の場を提供した顧客だけでなく、顧客と付き合いがある日立社内の事業部門からも厳しい視線が注がれる。