(5)EU統合の進展上、画期的な合意

 今回の合意は、こうした構造的問題の抜本改革を目指すものであるが、財政政策という国家主権そのものへの制約という観点からは、欧州連邦ないし合衆国への統合に向けた画期的な一歩として、EUの歴史的転換点になり得ると見る向きもある。

 今回、フランスは、財政主権擁護の立場から、ユーロ圏17ヵ国だけの合意とし、合意の監督も政府間の相互監視に止めることを望んだが、ドイツはEU全加盟国27ヵ国の合意とし、合意の監督を第三者(具体的には欧州委員会)に委ねることを強く望んだと伝えられている。

 恐らくドイツとしては、こうした欧州統合の行方を左右する歴史的な枠組みは、非ユーロ諸国圏を含めたEU全体の法規範とすべきであり、かつ、信頼度を高めるため第三者機関による客観的な審査を導入すべきと考えたのであろう。

 英国の反対で26ヵ国の合意になったとはいえ、結果はドイツの意向に近いものになったと言える。

EU統合の歴史的展開

(1)EU統合の進展と域内格差の拡大

 EU統合は、元来、独仏不戦のための恒久的な仕組みを設けるという政治的理想に端を発するものであるが、主に関税同盟および鉄鋼・石炭・原子力という戦争手段の統合を基幹とする経済統合として成功し、その結果、当初の6ヵ国から現在の27ヵ国にまで地理的範囲を拡大してきた(いまだに拡大中)。その過程で、政治社会面など機能的にも統合範囲を拡大深化させ、通貨統合という画期的な進展も見せてきた。

 一方で、EUのこうした地理的範囲や機能の拡大は、EU各国の中での経済力や国民性・文化の違い、さらには統合に何を期待するのかについての思惑の差異を拡大させていった。通貨統合も英国などは不参加のままである。また、統合の進展の中で、主権をどこまでEUに譲渡するのか、各国の主権とEUとしての迅速な意思決定とのバランス(全会一致か多数決か)をどうするのかが大きな課題になってきている。英国などは国家主権を欧州委員会に譲渡することに極めて慎重である。