ちっとも生活が楽にならない――。不況の出口が見えない日本では、こんな溜息がそこかしこに溢れている。それは単なる不況のせいなのだろうか。実は、一般世帯が感じる生活苦の裏側には、新たな構造不況が見え隠れする。デフレで給料が減り続けるなか、安くなるのは家電や外食などの贅沢品ばかり。食料品やエネルギーなどの生活必需品は、むしろ価格が上昇している。これでは、いくら働いても節約しても、楽な生活を望むべくもない。この未曾有の苦境をどうやって乗り切るべきか。生活苦に喘ぐ家庭が模索する「逆転発想」の生活防衛術を探ってみよう。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

これは単なるデフレ不況ではない?
いくら節約しても生活が楽にならない理由

「生活苦とまではいきませんが、いくら働いても節約しても、一向に暮らし向きがよくならない気はします。この冬のボーナスは、増えこそしないものの、前年並みの額が支給されました。でも、通年で見ると貯金の額はほとんど増えていませんね。この1年、特に贅沢をしてきたつもりはないんですが……」

 ある40代のビジネスマンは、こう疲労感をにじませる。彼だけではない。不況の出口が見えない日本では、こんな溜息がそこかしこに溢れているのだ。一般庶民の生活が苦しいのは、足もとで始まったことではない。だが、「それにしても、やけに生活が苦しい」と感じている読者は少なくないだろう。

 長期にわたってデフレが続く日本では、商品やサービスの価格は低下傾向にある。一度街に出れば、そこそこクオリティの高い生活用品を100円ショップでいくらでも買うことができる。

 家電量販店でも、まだそれほど型落ちしていない大型の薄型テレビが10万円をゆうに切る値段で売られているし、“デフレの象徴”のようにとり上げられる牛丼チェーンをはじめ、飲食店でもワンコインで食べられる豪華なメニューが増えている。

 つい先頃、松屋フーズが松屋の「牛めし」並盛りを、これまでの320円よりも40円安い280円に価格改定すると発表し、話題になったことは記憶に新しい。