執筆ではあえて「太田光」を抑えた
──『マボロシの鳥』と比べるとどんな作品に仕上がっていますか?
太田 『マボロシの鳥』は自分が今まで読んできた小説へのオマージュなどを含めて好き勝手に書いた作品です。でも、太田光がうるさいという意見が多くてね。読んでいて太田の顔がちらついてしょうがない、もっと引っ込めと。僕らは爆笑問題として社会で起きていることをずっと漫才にしてきたんで、社会と向き合うってことをどうしても避けられない。まぁ好きなんですね。
でも、今回の『文明の子』は自分の考えをできるだけ抑えた形で物語の中に自然にとけ込ませるようにしたつもりです。それでも伝えたい思いはあるわけで、この自分たちが作りあげてきた文明というものは、それはときどき失敗はあるし乱暴だし、とんでもない冒険だし、でも本来それはお金のためなんかじゃなく、人間の命を守るために発展してきたんじゃないかと思うんです。この先も人類はそうやって続いていくんじゃないかと。
繰り返すようですが、どうにかして今のこの状況下で文明を肯定できないかなという思いがありましたね。だからそういった部分を感じ取ってもらえる作品になっていればいいな、と思っています。
──前回が『マボロシの鳥』、今回も鳥が重要なモチーフとして登場しますが?
太田 どうしてなんですかね〜、なぜか鳥が出てきちゃうんですよ。自分ではあんまり意識してないんですけど、そういや俺、鳥の話ばっかり書いてるなと。ただ3作目のタイトルが『鳥取』なんですけど。
──構想から書きあげるまで、どのくらいの期間を要しました?
太田 初めにこの本を作るために短い文を書き始めて、それからは2年くらい経ちますかね。それを一つ一つ膨らませていって、本格的に執筆に入ってからはちょうど1年くらいじゃないでしょうか。
──相当に忙しいなか、1年で2作目の小説を書くのはかなり苦労があったのでは?
太田 いや暇なんですよ意外と。空いてる時間はずっとパソコンを開いてちょっとずつちょっとずつ、1日2行でも3行でも書ければいいやと書き溜めてきたんですけど、どうしても途中誘惑に負けてエロ画像を見てしまうわけですよ。その自分との闘いが一番辛かったですね。