最新書き下ろし小説『文明の子』を発表したばかりの太田光氏。構想2年の新作に込めた熱き思いを全3回で大公開! 第1回は、震災や原発問題に触発された執筆動機から、「あの賞が欲しい!」という本音まで、爆笑ジョークを織り交ぜながら赤裸々に語ってもらいます!

文明をそんなに簡単に否定してしまっていいのか?

──まず『文明の子』というタイトルの意味について聞かせてください。

(C.Hikita)

太田 今回、小説としては2作目になるんですが、前著『マボロシの鳥』を書いている途中から並行するような形で進めていたんです。ところが、その途中で去年の震災が起こり原発問題もあった。そのとき、我々の持つ文明とはいったいなんだろう、と考えるようになって小説の焦点がぐっと「文明」というテーマに寄っていきました。

 最初は『大丈夫、きっと明日はできる』ってタイトルだったんですけど、出版社のほうと宣伝の方向でいろいろとトラブルがありまして、まぁ『文明の子』というタイトルに落ち着いたんですけど。

──今回の小説のアピールポイントは?

太田 前作は短編集だったんですけど、これが文壇にボロクソに言われましてね。「ちっとも面白くない」って豊崎由美に言われてしまって、非常に悔しい思いをしました。一般の読者からも次は長編小説を読みたいって声も多かったんで、今回は短編風の形でありながらうっすらと全体の物語がつながっているという、ちょっと変わった構成に仕上げました。

──詳細は読んでからのお楽しみと。

太田 そうですね。犯人はまだ言えません!

──どういう思いを込めて今回の作品を発表されましたか?

太田 震災があり、原発問題が起こったのを受けて、私のとても尊敬する作家の方が外国のメディアに対して、日本がどうしてこうなってしまったのか、理由は簡単だとおっしゃってたんですね。戦後の日本人は人命よりも利便性や効率を選んだんだ、それだけのことだ、と。

 その言葉を聞いてちょっと俺は違和感がありましてね。自分たちの築いてきた文明をそんなに簡単に否定してしまっていいものか、ああいった事故が起きると否定したくなる気持ちはわかるんですけど、表現する立場にいる人がそれをいともあっさり断定してしまうことが残念でね。表現者が文明を後押ししてきたという側面もあるわけですから。

 今の日本は、震災以降みな恐怖心がベースになっているところがあると思うんですよ。福島で放射能の恐怖にさらされ、毎日ニュースを見ながら怯えている人たちがいる。その最中に、ヒステリックにもう日本には住めるところがないんだとがなりたてる表現者が現れる。そういう意味で一番許せなかったのは東京電力でも政府でもなくて、同じ表現をしている人間がいとも簡単にそう言っていることがとっても嫌でしたね。俺はそういう見方はしたくないなと。

 文明を肯定しにくい今の状況下で、なんとかポジティブに捉えられないだろうか、自分の中の思考実験というか、挑戦してみようかなという思いで今回の作品を書いたんです。それで皆さんの反応を聞きたいなというのと、あとは気の弱い選考委員がショックでひっくり返って目をシバシバさせて都政に混乱をきたすとまずいので、まぁ「出してやるよ」と、そういう気持ちで書きました。