
株主総会のピークが迫る中、注目を集めるのが不祥事企業の行方だ。機関投資家が「不祥事認定」を下せば、取締役の再任に黄信号がともる。しかし、その判断基準は投資家間で大きく異なるのが実情だ。特集『株主総会2025』の本稿では、主要機関投資家による不祥事認定の議決権行使結果を集計し、「不祥事企業を許さない機関投資家ランキング」を作成した。不祥事に厳しく対処した投資家と、静観した投資家。その対応の差と実名を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
不祥事企業は株主賛成率急落も
投資家間で分かれる不祥事認定
株主総会が近づくにつれ、取締役たちの緊張は高まっている。とりわけ、不祥事を抱える上場企業の経営陣にとっては、心中穏やかではいられない時期だ。
直近1年以内に不祥事が明るみに出た企業は、機関投資家から不祥事認定を受ける可能性がある。不祥事に認定されれば、議決権行使で取締役の選任議案に対する反対票が一気に集中し、株主賛成率が急落するリスクにさらされる。場合によっては可決ラインを下回り、“一発退場”につながる可能性も出てくるだろう。
特に企業にとって頭が痛いのは、機関投資家の不祥事に対するスタンスが変わりつつある点だ。大和総研政策調査部主席研究員の鈴木裕氏は「以前から不祥事の基準は存在していたが、最近では株価や業績に目立った影響がなくても、不祥事と見なされるケースが増えている」と指摘する。
背景には、議決権行使の賛否だけでなく、その判断理由まで開示するルールが定着していることにある。不祥事を見過ごす根拠が曖昧なままでは、説明責任を果たしたとは見なされなくなってきたのだ。
とはいえ、全ての機関投資家が同じ尺度で判断しているわけではない。2024年1~6月に開催された株主総会の議決権行使結果を調査したところ、主要10社の機関投資家間で、不祥事を認定した件数には最大10倍近くの開きがあった。
次ページでは、そのような不祥事への対応の差を可視化した「不祥事企業を許さない機関投資家ランキング」を公開する。不祥事企業に最も多く“レッドカード”を突き付けたのはどの機関投資家か。逆に、株価操作のような重大な不祥事にも目をつぶった、寛容な機関投資家の実名も明らかにする。