まあほとんどの人は相手にしないだろう。そんな中、先輩だけはなんだかんだ売り子と話をしている。気づけば袋を持たされ、お金を払っていた。

 ほんとに人がいいというか、騙されやすいというか。時には《誰があんなものを買うんだ?》といった、どう考えても使いようのない現地の人形などをお土産に買わされることもあった。そして観光地ごとに妙なお土産がどんどん増えていった。

 この時、私は《先輩トップ営業マンなのに、なんであんなに押しに弱いのだろう》と不思議に思っていた。

先輩営業マンのまわりには
人の輪ができていた

 旅行から戻ると、先輩は営業の仲間に「これ無理やり買わされてね」と言いながら、お土産を一つひとつ披露していた。

 物によっては、みんなから「なんでこんなもの買ったんですか?」と大笑いされることも。その話がとても面白く、先輩のまわりには人の輪ができていた。

 こうして仲間へのお土産をネタに、面白おかしく情報提供をしながら、コミュニケーションを取っていたのだ。事実、先輩のエピソードはおもしろく、いつも人が集まっていた。

 一方、私はどうだろう?

 寄ってくる売り子を寄せ付けず振り払ったため、無駄な物を買わずに済んだ。その代わりに私が買ってきたお土産は「定番の品」ばかり。

 みんなから社交辞令的に「ありがとうございます」と言われたものの、誰も興味は持たない。その後もほぼ誰も手をつけられずに、しばらく放置されていた。