さらに見方によっては、労働環境は以前より悪化しています。例えば、勤務問題が原因の自殺者数は、この30年で2.5~3倍も増えています。労災支給決定件数も、脳・心臓疾患によるものは横ばいとはいえ、精神障害によるものは右肩上がりに増えています(出所:厚生省)。これに加え、90年代以降、日本固有の社会分断制度ともいえる正規・非正規雇用の問題が日増しに深刻化し、働き方改革をより複雑化しています。

日本の働き方の本質は100年変わっていない

 世界での働き方改革の歴史は、18世紀後半イギリスで始まる産業革命に遡ります。これを機に、プロレタリア層(俗にいうサラリーマン)が増え、彼らの労働条件改善に向けた法整備圧力が社会的に高まったからです。

 労働時間では、1817年にイギリスで1日8時間労働の実現に向けた運動が起き、1919年~30年にかけ、国際労働機関(ILO)により「1日8時間・週48時間労働」が国際標準化します(国際労働条約1号、30号)。以降、欧米各国では何度かの労使間闘争と法改正を繰り返し、現在では、フルタイム労働者の年間平均実労働時間は1600時間台(フランス、フィンランド、スウエーデン)から1800時間台(ドイツ、イギリス、スペイン)となっています(出所:ユーロスタット)。これらの数字は、日本と異なりサービス残業がほぼゼロなので、まさに実労働時間です。

 一方、日本人の働き方改革の歴史はどうでしょう。初の労働者保護法である工場法が1916年に施行されてから100年、その間、23年の工場法改正、47年制定の労働基準法、その後の法改正を経て、「1日8時間・週40時間」と定められ、同時に労働時間規制の弾力化もされるなど、法的には進歩しています。

 しかし、こうした法律上の理想や原則とは裏腹に、働き方の本質は変わっていません。特に、極度の残業依存(サービス含め)、休日返上(公休と有休)、法的原則(こうあるべき)と労働実態(そうは言っても…)のダブルスタンダードの使い分けという労働慣行は今も公然と、しかも労使双方の共通利害であるかのように残っています。

日本の地盤のままで西欧への追従は無理がある

 欧州の労働者も、かつては長時間働いていました。それが働き方改革を通して、前述のように時短と休日増が実態として着実に進みました。一方、なぜ日本では、こうした悪しき労働慣行が100年も、根深くしかも広範囲に残るのでしょうか?