それでも心配なら、机の上や財布の中に、家族の写真や恋人の写真を入れておき、誘惑に負けそうになったら、こっそりと見ることも有効だろう。

 聖書にはこんな言葉がある。

「人は、たとえ全世界を手にいれても、自分自身を失ったり、損じたりするならば、なんの益があるだろうか」(ルカによる福音書)

 本当にイエスの言う通りだ。エリート官僚の場合は、株取引で多くの金を得ただろうが、自分自身の地位も名声も失ってしまった。まことに愚かしいことだ。

 さらに孔子は、「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る」と言う。利という我欲に足をとられたエリート官僚は、所詮、小人だったということだ。しかし、彼と五十歩百歩の私たちは、いつ何時、誘惑に負けるかもしれない。大過なくビジネスマン生活を過ごし、定年を迎えるのは非常に難しい時代でもある。どんな誘惑に巻き込まれるやも知れぬ。そうであれば、再び孔子が言うように「吾日三省吾身」(吾れ、日に三つ吾が身を省みる)しかないのだろう。


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