科学的な側面から
性教育をすべき

 もちろん、科学的な側面から性教育を教えたからといって、全てのリスクを回避できるわけではない。しかし、正確な知識を学ぶことは、性に関わる欲求や行動コントロールする力を養うことにつながるはずだ。

「自分の存在を科学的に知ることが、ひいては自分の存在の科学的な“見事さ”のようなものを実感することになります。そうした実感を得られれば、道徳などで徳目を強調しなくても、産んでくれた人や、育ててくれた人に対する感謝に自然と結びつくことになるのです。現場で子どもたちと接するほど、科学的な学びは人権とつながっているのだと確信を得ることができます」

 進まない日本の性教育ではあるが、田代教授によると「1982年4月に発足した『一般社団法人“人間と性”教育研究協議会』に集まる研究者や教員たちによる性教育への取り組みの成果は、確実に蓄積されています」とのこと。このように、有志たちによる地道な研究の存在を知れば、前途は暗いばかりではないとも思う。

 性を学ぶことは自分の身体と心を見つめるきっかけであり、それは将来にわたって自分らしく、健康で幸せな生き方を考えるうえで欠かせないはずだ。自分を守り、より有益な選択肢を広げるベースとなる知識を教えることこそ、公教育が担うべき役割ではないだろうか。