先週の富山市での講演は、雪との競演となった。行きは先週のコラムで述べたように、大雪のため富山行きの飛行機を小松行きの便に変えて、小松空港からタクシーと電車を乗り継いで、雪がしんしんと降りしきる富山にたどり着いた。

 講演を終えた翌日の夕方、いざ空港へ移動しようと思ったら、タクシーの無線から飛行機の欠航の知らせが飛び込んできたので、そのまま方向を転換して、富山駅に駆け付け、そこから電車で越後湯沢へ移動して、さらに新幹線に乗り換えて東京に帰る方法を取った。

 出発まですこし時間があったので、富山駅前の店を覗いてみた。そこのパン屋「ヴィ・ド・フランス」で意外なものを発見した。「富」の字を○で囲んだ文字(マル富)が焼きつけられている焼き立ての餡パンだ。言うまでもなくそれは富山という地元カラ―を出すための商品だが、莫邦富家のパンとも解釈しても無理はないだろう、と4個買った。それを見た時の家族たちの表情を想像して、電車に乗り込んだ。

 遠回りして4時間もかかってようやく東京の自宅にたどり着いた時には、もう夜9時を回っていた。カバンに入れていたため、すこしぺちゃんこになってしまったが、それでもそのパンを目にした瞬間、家内は笑いが止まらなかった。娘も目じりが下がりっぱなしだった。ここまでは計算済みだ。

中国からも「マル富」パンを
買いたいという声が

 深夜、面白半分にやや不細工になったそのパンをカメラに収めて、その写真をFacebookと中国のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)である新浪微博にアップした。そうしたら、意外な反響が巻き起こった。中国の成都にいるという見知らぬフォロワーの人から、このパンを購入したいという書き込みがあった。その他の希望者も出ている。