春節という“迷惑行事”からの
逃避行先としての日本

 そしてその「逃避行」先として選ばれるのが日本だ。その理由は、「近い、安い、安全、安心」だからだという。もちろん春節期間中の旅行料金は普段より数倍高いのだが、それでも遠いヨーロッパよりは安いし、中国の国内旅行とあまり変わらないという。

 これまで中国からのインバウンドといえば「爆買い」だったが、最近は状況が少しずつ変わってきているようだ。ビザの緩和で個人旅行が可能になったのも追い風で、家族連れで団体旅行ではない来日が増えている。
 
 旅行先としての日本は、小さい子どもを連れていても便利で安心だというのが定評になっている。多くの出先のトイレにはベビーチェアが設置されているし、場所によっては小さい子ども用のポータブル便座も用意されている。駅の構内にはエレベーターやエスカレーターが設置されていて、ベビーカーを押していても問題ない。その上、中国の観光スポットの混雑ぶりと比べると、日本は、「秩序が良い、騒がしくない、人々がとても親切」、ゆえに居心地が良いのだ。
 
 会社勤めのサラリーマン家庭、いわば中間層は、一年間頑張った自分へのご褒美で春節に日本にやってくる。その際、普段よりちょっと贅沢して、少し良いホテルの良い部屋を取る。滞在中、計画なしで気ままに過ごす人が少なくない。
 
 上海にいる知人一家は、春節はほぼ東京か大阪で過ごしている。気が向いたら、どこかを散策し、食べたいものを食べる。時にはどこも行かず、丸一日ホテルに籠ってルームサービスで食事したり、エステやマッサージ、カフェでのんびりしたりする。彼らにとっては、春節中の日本は自分たちの「療養先」であり、自身への「ご褒美」でもあるのだ。