「自分軸」を取り戻したら
大量の食器を処分できた

長年にわたり断捨離を続けている幸さん(仮名)。

衣類はいとも簡単に手放すことができ、お気に入りの服を厳選できているのに、食器類の断捨離は一向に進みません。

ご飯茶碗、汁椀、湯呑み、皿、小鉢、カップ、グラス等々、多種多様な器が並ぶ食器棚は見事ですが、幸さんは「どれも気に入らない」と言うのです。

じつは、それらの器は全てお姑さんからの贈り物だったのです。

しかも、そのほとんどが、お姑さん自身がもらったもの。

お姑さんも、幸さんに託すことで責任転嫁をしていたのでしょう。

冠婚葬祭やお中元・お歳暮でなだれ込んできた器が食器棚に詰まっていたのです。

ただ、全て使えるモノであり、質も悪くないため、幸さんに「捨てる」という発想は起こりませんでした。

その期間、約20年。

その後、意を決した幸さんは、食器棚と向き合いました。

お姑さんの善意の押しつけのような食器を出し始めたら、かつて白かった棚がひどく汚れていることに気づきました。

そして、食器を全て出し、棚を拭き始めたとたん、自然と涙が頰を伝いました。

「こんなに汚くしてごめんね」と。

これまで、食器の1つひとつに愛着も持てず、食器棚を掃除することもなかった彼女が、なぜ泣けてきたのでしょう?

それは「お義母さんがせっかくくれたから」と他人を基準にしていた分、自分を犠牲にしてきたことに気づいたからです。

食器棚に向けての「ごめんね」は、お姑さんとの関係性の再構築の瞬間でもあり、「モノ」と「他人」にばかり軸を置いてきた自分に向けての謝罪でもあったのです。

そして、幸さんはやっと、大量の食器を処分することができました。