英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週は経済の話です。2011年通年の国内総生産(GDP)成長率が実質0.9%減だと明らかになり、その翌日には日銀がデフレ脱却のため「インフレ目標」を初めて設定し、かつ資金供給枠を10兆円拡大すると発表。この日銀の動きは一部の英語メディアにとっては意外で、かつ「嬉しい驚き」だったようです。(gooニュース 加藤祐子)

去年4月の予想はあたったか

 内閣府が13日発表した2011年10~12月期のGDP速報値によると、物価変動の影響を除いた実質GDP(季節調整値)は前期比0.6%減、年率換算で2.3%減で、2四半期ぶりのマイナス成長でした。そして、2011年通年の実質成長率は0.9%減、名目で2.8%減。7~9月期に大幅にプラス成長して震災の影響を脱したかに思えた日本経済は、歴史的な円高や欧州債務危機などによる輸出減少で、景気がまた停滞してしまった様子です。

 振り返って震災直後に2011年の日本経済を専門家たちがどう展望していたかを、昨年4月初めにまとめたコラムはこちらです。復興特需で一時的に盛り返すが通年ではゼロからマイナス成長という当時の予想が、当たった形でしょうか。

 そして現在。昨年10~12月期のGDP縮小について13日付の英紙『フィナンシャル・タイムズ』は「タイの洪水、円高、海外需要の減退によって輸出が打撃を受けた」ためだとして、トヨタや日産自動車といった輸出産業企業の幹部が、現行の為替レートで日本から輸出して利益をあげるのは不可能だと訴えていることも説明。GDPが「予想以上にひどく縮んだのを受けて、さらなる金融緩和を日銀に求める政府の圧力は高まるかもしれない」と予測しています。

 その一方で筆者のベン・マクラナハン記者は、「しかし東南アジアのサプライチェーンが修復され、アメリカ経済がもっと元気よく回復しはじめれば、未来図はもっと明るいはずだ」と楽観。ブルームバーグ社は2012年の実質成長率を1.7%で予測しているそうです。しかもそれは、世界平均の2.2%よりは低いが、1995年以降の日本の平均成長率の倍以上だと。

 この明るい見通しの背景には、そのほかにも10~12月期に機械受注が10%増え、在庫も増えているという要素があるのだとか。なにより被災地の復興需要があり、これまでは政府が復興用の補正予算を成立させても復興事業の認可が遅れたり建設作業員が不足したりしていて実際の公共投資は遅れていたが、今年の4~6月期以降は投資額の安定的な増加が期待されているし、復興の最初の5年間で、阪神大震災の復興に使った額の約4倍に当たる19兆円を投入する予定だからだと。

 米紙『ニューヨーク・タイムズ』の経済担当ベッティーナ・ワセナー記者も13日付の記事で、「停滞する国際貿易、強い為替、タイの深刻な津波被害の影響がいずれも、2011年最後の四半期で日本経済に打撃を与えた」として、景気刺激策を追加するよう日銀への圧力が高まるに違いないと書いています。東日本大震災の後に製造業再開と復興活動で経済はいったん勢いを取り戻したが、いったん回復したものが損なわれてしまったのだと。

 つまり最終的に通年でマイナス成長となってしまった原因は、昨年3~4月当時に予想されていた要因というよりも、その後に起きた外的要因なのですが、こうした外的要因に常に脆弱なのが輸出主導型経済なわけです。そういう脆弱さからの脱却を目差して内需拡大内需拡大と唱え続けて、もう30年近くでしょうか。

 余談でした。そして、「未来図は明るい」と書いた『フィナンシャル・タイムズ』とは異なり、この記事では「タイ洪水の影響は消えつつあるが、日本製品の海外需要は低迷し続けるだろうとアナリストたちは言う」と悲観的です。日本経済は「上昇気流に乗ろうと苦労としている」とも。また追加策をするよう日銀には圧力がかかっているが、「今週はまだ何もしないだろうと多くのアナリストは見ている」とも書いています。

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