「直接の介護」が恩返しになるとは限らない

私が伝えたいのは、これが「仕事を辞めて、自分で親の面倒を見る」ことの先にあるひとつの現実だということです。

高齢者の介護の負担は月日とともに重くなることはあっても、軽くなることはなかなかありません。そのため、「自分で面倒を見る」と決めてしまうと、いつしかその負担に耐えきれなくなり、介護離職もやむなし、といった決断になってしまいがちなのです。

家族だけ、子どもだけで介護するというのは生半可なことではありません。親のためを思ってはじめたはずなのに、いつしか親が憎くなって虐待してしまったり、精神的に追い込まれて親を殺してしまったり、一緒に死のうと心中をはかったりしてしまう……。
そんなニュースを、みなさんも目にしたことがあるのではないでしょうか?

「大事な親だから、自分が直接やってあげたい」
「育ててもらった恩返しがしたい」
「自分がそうしてもらったように、母のおむつを替えてあげたい」

その気持ちは美しいものです。しかし、それを5年、10年続けられるかというと、ものすごく大変でしょう。私は実際に、介護を何年も続けていらっしゃったご家族と数えきれないほど出会い、サポートをしてきました。その大変さを心の底から実感しています。
だからこそ断言します。介護で仕事を辞めないでください。介護離職は、家族の誰も幸せにしてくれません。