いずれも最終的な自己負担はないが、一時的とはいえ医療費の全額を立て替えるのは大変だ。というのも、労災保険で受診する場合の医療費は、健康保険で受診するよりも高く設定されているからだ。

 病院や診療所で行われる検査、投薬、手術など診療行為は、ひとつひとつ国が価格を決めている。この価格を診療報酬といい、静脈注射は30点、500ml以上の点滴は95点などと点数で表示されている。健康保険では、この診療報酬に1点あたり10円をかけたものが実際の医療費になる。

 しかし、労災保険は1点あたり12円なので、単純計算でも2割増しになる。また、医療費の基本料金である初診料も、健康保険が2700円なのに対して、労災保険では3640円に設定されるなど、健康保険より労災保険で受診するほうが医療費は割高なのだ。

 労災指定病院以外では、この割高な医療費の全額をいったん患者が立て替えなければならない。交通事故など突然の事故で受診するような場合は病院を選んでいる時間はないが、内科系、精神科系などの病気で受診する人は、事前に労災指定病院かどうかを調べておくといい。最寄りの労災指定病院がどこにあるかは、労働基準監督署のホームページなどで調べることができる。

 ただし、仕事中、通勤途中の病気やケガすべてに労災が適用されるわけではない。どのようなケースなら労災が適用されるのか、具体的に見てみよう。

 【業務災害】
  労働時間や残業中にケガをしたり、仕事が原因で病気になったりした場合を業務災害という。認められるかどうかの判断基準は、病気やケガをした理由に仕事との因果関係があること。また、会社の支配下にあったときに起きた労災事故かどうかで判断される。休憩時間中の事故は原則的に補償されないが、会社内の施設が原因で起きた事故なら補償される。

○認められる
・昼の休憩時間に社員食堂に行こうとして転んでケガをした
・出張中に事故にあった
・自社工場のライン作業中にケガをした

×認められない
・社内恋愛のトラブルに巻き込まれて同僚に殴られた
・休憩時間中に外出して事故にあった
・取引先と飲みに行って、食中毒を起こした