実績がない新規設定の
投資信託は買ってはいけない!
毎月分配型投信と並んで話題になりやすいのが、運用開始を間近に控えた投信、いわゆる新規に設定される投資信託です。
これは銀行や証券会社で、勧められる商品の筆頭だと思うのですが、なぜかと言えば「この支店では、新しい△△投信は□□万円集める!」とノルマ設定されることが多いから。それに過去の実績がないということは、買う側の判断材料が少ないため、セールストークで売りやすい商品だからです。
私はこれも「つまみ食い」投資の候補からは外すのが賢明だと思います。というのは、金額規模が大きい日本株の投資信託に関しては「実績がない」以外にも仕組みの問題として「値下がりがしやすい」要因があるからなのです。
10年ほど前、大きな話題を集めた日本株ファンドを例に解説しましょう。
その投信は、大手運用会社でエース級のファンドマネージャー複数が結集して運用を行なう投信として売り出されました。それだけなら珍しい話ではありませんが、日本を代表する旗艦ファンドとして、設定時(運用開始時)に1兆円の資金を集めるという方針が打ち出されたのです。今でこそ、純資産総額が1兆円を超える投信は複数ありますが、当時としては驚異的な販売目標でした。
そして系列の大手証券会社が販売に力を入れ、目標どおり、日本で初めての1兆円ファンドとして運用が開始されました。
ここには大きな問題が隠れています。新規で日本株に投資する投信が設定されることが発表されます。しかも1兆円規模。運用が開始されれば、巨額な資金が株式市場に流れ込むことは間違いありません。
巨額な資金が株式市場に入るということは、その投信(1兆円ファンド)が買いそうな銘柄は株価の上昇が期待できるということになります。
そこでほかの運用会社や個人投資家は、一足先に(株価が上がる前に)組入れられそうな株を買います。すると株価は上昇。逆に1兆円ファンドの運用者が買うときには既に株価が上がっているため、高値で株を買うことになります。
株価が上昇してくれば、一足早く買った投資家は株を売って利益を確定します。すると今度は株価が下がり、1兆円ファンドの基準価額も下がる、というわけです。
1兆円ファンドに限らず、新規で設定される投信にはこのような運命がついてまわります。大々的な広告を打つ新規設定投信ほど魅力的に感じるものですが、設定時に大きな資金を集めれば集めるほど、1兆円ファンドのような事態になりやすいのです。
新規設定は過去のデータがないため
購入する側は不利、つまり売る側が有利!
日本株以外のファンドだったら大丈夫だろう、と思うかもしれませんが、これに関しても、まだデビュー前の投信には実績がないということをぜひ忘れないでください。
ファンドマネジャーの運用手法が合っているのか、運用がうまいかどうか、ベンチマークに対して勝てる投信かどうか、判断する材料がないのです。
もちろん、過去の実績がそのまま今後も続くという保障はありませんが、過去の成績をみれば、ベンチマークに対してどのくらい勝ち負けがあるのか、組み入れ銘柄はどうなのか、などそれなりに判断ができます。しかし、新規設定はそれがありません。
前述しましたが、売る側からすれば、買う側の判断材料が少ないので、売りやすい=セールストークでいくらでも良い説明がきる商品と言えるのですね。「つまみ食い」をするなら、いろいろと判断ができる既存のファンドから選びましょう。
※次回は 投資は結婚生活に似ている?
ほったらかしはダメ です
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