シリーズ124万部突破のベストセラー『伝え方が9割』著者の佐々木圭一さんと、『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』の著者であり、近著の『バクノビ~子どもの底力を圧倒的に引き出す339の言葉』も話題の坪田信貴さん。約1年ぶり3回目となるお二人の対談は、気心の知れた者同士、さまざまな話題で盛り上がりました。(構成・伊藤理子 撮影・小原孝博)

『バクノビ』は講師育成ノウハウをまとめた本

どの会社も採用しないような人を雇って、その人をめっちゃ育て上げる方法があるんです。<br />【佐々木圭一×坪田信貴】(前編)<br />

佐々木 『バクノビ』、読ませていただきました。子どもの能力を爆発的に伸ばせる語録、どれもなるほどと感心させられました。なぜ、この本を書こうと思われたのですか?

坪田 ありがとうございます。実はこの本を書くつもりは全くなかったんですよ。

佐々木 そうなんですか?!

坪田 僕は塾の経営をしていますが、「講師を育てる」のが何より重要だと思っていて、講師研修に時間もお金もかけています。講師の学びになるように、一流の人に講師に来てもらったりもするし……佐々木さんにも来ていただきましたよね?

佐々木 行きましたね。とても楽しかったです。

坪田 そうして講師として実績が積み上がってきたら、校長としてマネジメント経験を積んでもらい、1、2年したらいったん現場から抜けてもらって僕に付いてもらうようにしています。かばん持ちみたいな立場で、人に会ったり、面接をしたり…すべての仕事を見せながら、「人を理解する」力を身に着けてもらう。そんな期間を2ヵ月ぐらい設けているんです。その「かばん持ち」時代に僕が教えた言葉を、今、東京校を任せているイワタが全部メモしていたんですよ。どうやら、僕が死んだら本にしようと思っていたみたいで。

佐々木 (笑)

坪田 外部に出すようなものじゃないから、自費出版にして講師に配ろうかという話をしていて、たまたまKADOKAWAの編集長にもお見せしたら、「本にしませんか?」という話になって、書籍化に至ったんです。

佐々木 そうだったんですか。なんかね、読んでいると坪田さんの声で聞こえてくる感じがします。リアルなイントネーションで。

坪田 嬉しいですね(笑)。

佐々木 この本って、めちゃめちゃ貴重ですよ。坪田さんは社内の人を育てるのに100%以上の情熱をかけていると思うので、本当であればこの本は「門外不出」ですよね。実はうちにも新しく社員が入ったので、彼が最高に伸びるためにはどうすればいいかとずっと考えていたんです。だから、坪田さんのノウハウがこれだけ凝縮された言葉でまとまっているなんて……本当は140万円で売り出していいものが、まさかの1400円で売られているという。

坪田 (笑)いやいや、そんなことはないですがありがとうございます。『ビリギャル』や『人間は9タイプ』など、今までに書いた本がきっかけでいろいろなところから講演に呼ばれるようになったのですが、中でも多いのが企業研修、社員研修なんです。超大手企業から中小企業までさまざまな企業に伺っていますが、どの企業でも多かれ少なかれ、社員をふるいにかけているなと感じて。

佐々木 ふるいって、どういうことですか?

坪田 例えばですが、たくさん新人を雇って、伸びた人は残るけれど、そうじゃない人は辞めていく…みたいな。「3年後離職率が高い」と問題視されていて、若者の根性が足りないなどと言う人もいるけれど、じゃあ残った人は何が違うのだろうと話を聞いてみると、「自分に合っていたから」というんです。では辞めた人は合っていなかったのかというと、そうとも言えない。残った人はたまたまウマが合っただけで、辞めた人もちょっと接し方を変えたらすごく伸びた可能性があるんじゃないかと思うんです。

佐々木 確かに、そうですね。