記録を取れば、自分自身の傾向がわかる

どの会社も採用しないような人を雇って、その人をめっちゃ育て上げる方法があるんです。【佐々木圭一×坪田信貴】(前編)坪田 記録をすると、自分の成長や変化に気づけるし、人や物事に対する認知も変わるし、悩み事だって減りますよ。

佐々木 そういえば、聞きたいことがあったんです。144ページの「本物の学力をつけるために」のところで、「基本は観察と記録。子どもの勉強や成長に関して必ず記録を残しておきましょう」とあるように、この本の中には「記録」という言葉がたくさん出てきます。僕自身は、勉強に関して自分で記録した覚えがないんです。偏差値みたいに客観的な数値として渡されるものがあったからだと思うのですが、坪田さんが「記録」を強調している理由は何ですか?

坪田 僕は高校生の時から毎日日記を書いているのですが、当時から、初めて出会った人のことをレーダーチャートで表しているんです。初対面の印象や会話内容をもとに、この人はこういうタイプではないか、今後こういう関係性になっていくんじゃないか……などと予想してチャート化しているんですね。そうしておけば、数年後に実際にどうなったのかが検証できる。人を見る目がすごく養われるんですよ。

佐々木 すごいですね!

坪田 もちろん、最初の頃は外れることが多かったです。「めちゃくちゃいい人に違いない」と高評価している人が、とんでもない人だったりね。でも、その経験が記録として積み重なっていくことで確度がどんどん高まる。今では出会って10分ほど話せば、この人とは多分こういう付き合いになるだろうという予想がつくし、外すこともほぼなくなりました。

佐々木 記録、真似したいですね。

坪田 記録をすると、自分の成長や変化に気づけるし、人や物事に対する認知も変わるし、悩み事だって減りますよ。例えば、好きな時に振られたときには、日記に「こんな恋は二度とない。ここまで好きになれる人は一生現れない」なんて書くんですけれど、すぐ新しい恋に出会って、また別れたときに同じようなことを書いたりしているんですよね(笑)。でも、これを読み返すと、「意外と俺、惚れっぽいな」と気づき、たとえ破局してもそこまで思い悩まなくなる。他の悩みであっても、記録されていれば経験をもとに「多分次はこういうことを考えるんだろうな」と予想がつくから、悩みがすぐに解決しちゃう。だから記録は本当にお勧めしたいです。

佐々木 この記事を読んでいる人に、「こういう方法で記録するといいよ」というアドバイスはありますか?

坪田 スマホで画像や動画を撮って、「今日はこんなことがあった」と簡単に記録して、Evernoteみたいなところに貼っておくのはどうでしょう。宇宙飛行士がビデオで「何年何月何日、こういうことをやりました」みたいな記録をしているじゃないですか。あんな感じで残しておくと、振り返るのが簡単です。あと、みんな記録をつけたいと思った時にまず日記帳を買うけれど、続けて習慣化することが大事なので、まずは思いついた時に目の前にあるものに書けばいいと思います。スマホの時もあれば、チラシの裏でもいいし、Googleカレンダーでも手帳でもいいし、出先で入った食堂の箸袋でもいい。毎日記録しておけば、「あ、前の日は手帳だったのに、この日は箸袋だったんだ」と振り返られる。この変化が振り返りの時に面白くて、続けられたりするんです。

佐々木 あの出張の時に食べた、中華屋の箸袋か…なんて思い出したりして。

坪田 そうそう。そして「今日は気が乗らないからサボる」「時間がないから書かない」でもいいんですよ。振り返ると、「この月、この曜日は抜けが多いな」とわかる。「金曜日の抜けが多いけれど、週末だから忙しいのかな」とかね。自分の傾向もわかってくるので面白いですよ。

佐々木 なるほど!記録を取って自分の傾向がわかると、どこで集中すればいいのかも見えてきますね。そういうのがつかめるから、「バクノビ」するんだなあ、きっと。

坪田 さすが!いい感じにまとめて下さった(笑)。

後編へつづく