障害のボーダーにいる人も
「8050問題」を痛感する相談事例

「8050問題」の世帯に当てはまる相談事例も最近、増えている。

 50歳代の男性Aさんは、障害のボーダーは感じなかったものの、人間関係が苦手で、高校までは我慢して卒業した後、40年にわたり引きこもり、仕事経験がなかった。両親の年金で生活していたが、80代に入ってともに亡くなり、生活保護の受給者になった。ただ、まだ50歳代だったことから、役所のケースワーカーから「何か仕事できませんか?」などと相談が持ちかけられた。

 伊藤さんが面会したところ、本人は就労意欲があり、障害もなかった。話の内容から、頭の良さが感じられたものの、「人間関係が苦手」という障壁があり、目を見て話ができなかった。Aさんは、根も真面目なことから、週に3日、2年以上にわたって実習に通った。年末年始も休まずに通い続けた話などを聞いた別の社会福祉法人の職員として雇用され、今も生き生きと働き続けているという。

 50歳代の男性Bさんは、逆に「働きたい」という意欲がなかった。就労経験はあったものの、アレルギー症状の痛みに苦しみ、休んだことを上司から叱責され、会社を辞めて以来、15~6年にわたって引きこもってきた。しかし、年金で生活していた母親が身体悪化で施設に入り、公営住宅の立ち退きを迫られた。伊藤さんが4~5ヵ月にわたり相談を続けた結果、役所の職員と一緒にハローワークに出かけ、アルバイトで働き始めた。

 50歳代の男性Cさんは、妻が若年性認知症になり、その介護のために会社を辞めた。その後、失業給付と貯金で生活してきたものの、妻の介護を1人でしていくうちに自分も将来への不安からうつを発症。誰にも助けを求めることができず、介護サービスも受けずに、外とのつながりを絶って貯金が底をついた。ところが、伊藤さんのもとに相談に訪れ、同会の施設のデイサービスを見ているうちに、妻を預けようと決心。自らの不安も払拭され、アルバイトを始められるようになった。

 40歳代の男性Dさんの場合は、80歳代のお世話をしている地域包括支援センターの担当者から「無職の息子がいる」と相談された。10年以上引きこもっていて、認知症が進み始めている親の世話もしていない様子だった。当初はなかなか会おうとしなかったが、同会の施設でお手伝いを始めるうちに、フルタイムで働けるようになった。ただ、2ヵ月くらい経って「もう大丈夫、卒業です」と言った途端、また引きこもってしまったという。