コラム 自主管理への道のり

 あなたの組織はおそらく自主管理の原則を柱に据えてはいないだろう。十中八九は、官僚的な仕組みになっているはずである。複雑な決まり、幾重もの階層、多数のマネジメント・プロセスなどを設けて、全体の足並みと予測可能性を確保しようというのである。

 マックス・ウェーバーがおよそ100年前に指摘したように、管理こそが官僚制の哲学的な拠り所である。官僚的な組織におけるマネジャーは、決まりや基準の遵守、予算目標の達成などを部下に徹底させる監視役である。

 官僚制と自主管理は、全体主義と民主主義のように、対立するイデオロギーに根差している。自主管理型の組織を築くには、官僚制の弊害を取り除くだけではなく、官僚制そのものと決別しなくてはならない。

 アメリカの建国者たちは、君主制の行きすぎを和らげようとしたのではなく、それに代わる仕組みを取り入れようとした。これと同じように、自主管理を採用するなら強い覚悟で臨まなくてはいけない。さもないと、さらなる徹底を目指すべき時にそれができずに中途半端で妥協してしまうだろう。

 とはいっても、古くからの仕組みを壊すことが容易に許容されるわけではない。自主管理はマネジメント不在とは違う、極端なまでに分権化を推し進めるからといって無秩序を生むわけではない、と示す必要があるだろう。

 まず、従業員に自分の使命を書き出すよう求めよう。1人ひとりに「同僚のためにどんな価値を生み出したいか。彼らのために解決したい問題とは何か」と問いかけよう。どんな活動をするかよりも、どういった便益を生み出すかに焦点を当てるよう、はっぱをかけることだ。

 全員が短いミッション・ステートメントを書き上げたら、彼らを少人数のグループに分けて互いに批評させよう。この過程のおかげで、決められたルールに従う姿勢から、同僚同士の話し合いを通して責任を果たす姿勢への移行を始めるのである。

 次いで、従業員の自主性を広げるささやかな方法を探そう。みんなに「あなたの使命実現を妨げている手続きは何ですか」と問いかけるとよい。最も煩わしい手続きを特定できたら、それらを部分的に取りやめて、どうなるか様子を見てみよう。管理を緩めることは可能なのだから、自主管理の導入を真剣に考えているなら、段階を追って緩めていけばよい。

 さらに、チームごとにP/Lを持たせよう。裁量を賢く使うには、1人ひとりが自分の判断の影響を数字でつかむことができなくてはいけない。自主管理への道は情報によって開かれる。

 仕上げに、管理する側とされる側との分け隔てをなくす方法を見つけなくてはいけない。

 あなたがマネジャーなら、手始めに自分がチームにどんな責任を負っているかを列挙するとよい。そして部下全員に、そのリストに注記をしてもらおう。リーダーが統率相手に対してより大きな説明責任を持つことが、全員が互いへの責任を果たす仕組みをつくるうえで欠かせないのである。

 伝統的企業にとって、自主管理への道は長く険しいだろう。しかし、この分野の双璧を成すモーニング・スターとW. L. ゴア(注3)(〈ゴアテックス〉のメーカー、同社もマネジャーを置いていない)の実績は、努力するだけの価値があることを示している。いずれは、高い成果を上げ、しかも人間味にあふれた組織ができあがるだろう。

【注】
3)
W. L. Gore & Associates, Inc. デラウェア州ニューアークに本社のある、〈ゴアテックス〉で知られるメーカー。同社は、アソシエートと呼ばれる従業員の主体性や判断を重視し、従業員同士のコミュニケーションや信頼関係を基礎に、チームとして協働することで事業の成功を実現しようとする。

有賀裕子/訳
(HBR 2011年12月号より、DHBR 2012年4月号より)
First, Let's Fire All the Managers
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