エルピーダ破綻とAIJ事件、ともに日本を揺るがした大事件だ。それらの原因は複雑であるが、ともに円高・デフレによる低金利が一因となっている。この意味で、日銀の無策の被害者である。
エルピーダ破綻の
最大の要因は円高
エルピーダメモリは、2月27日、会社更正法の適用を東京地方裁判所に申請した。同社は、2009年6月、産活法(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法)の適用を受け、公的資金300億円、政府保証融資100億円を受けていた。
27日の記者会見でも坂本幸雄社長の発言は衝撃的だった。「為替については、リーマンショック前と今とを比べると、韓国のウォンとは70%もの差がある。70%の差は、テクノロジーで2世代先に行かないとペイしない。為替が、完全に競争力を失わせている。70%の差はいかんともしがたい。それを除けば、エルピーダのDRAMの損益は圧倒的にいい。為替変動の大きさは、企業の努力ではカバーしきれないほどだ」。
当事者にとってみれば、円高は避けることができない災害だ。筆者はパソコンを自作するので、エルピーダのモジュールを使ったメモリをよく使う。メモリは汎用品であまり製品差別化をできないが、エルピーダのものは品質がよくパソコン自作につきものの相性問題が少ない。それでも、そうした技術力に差があっても、円高になると一気に吹っ飛ぶのだ。
半導体に限らず、日本のものづくりの技術水準は高かったが、それを生かすも殺すも為替レートである。価格競争力がなければ、技術をアピールすることもできなくなる。最近、韓国企業が好調というのも、ウォン安政策によるところが大きい。
名目円レートでなく実質実効円レートで円高でないという話をする人もいる。しかし、これは、デフレの中で一般物価と同じペースで名目円レートもデフレ(通貨価値の上昇=円高)になっているということだ。そんな話は、円高で倒産した者にとってはなんの慰めにもならない。