西新宿に実在する理容店を舞台に、経営コンサルタントと理容師が「繁盛する理容室」を作り上げるまでの実話に基づいたビジネス小説。「小さな組織に必要なのは、お金やなくて考え方なんや!」の掛け声の下、スモールビジネスを成功させ、ビジネスパーソンが逆転する「10の理論戦略」「15のサービス戦略」が動き出す。<理容室「ザンギリ」二代目のオレは、理容業界全体の斜陽化もあって閑古鳥が鳴いている店をなんとか繁盛させたいものの、どうすればいいのかわからない。そこでオレは、客として現れた元経営コンサルタントの役仁立三にアドバイスを頼んだ。ところが、立三の指示は、業界の常識を覆す非常識なものばかりで……>すでに15回にわたって連載した『小さくても勝てます』の中身を、ご好評につき、6回分を追加連載として公開します。
本は1ページ目から
順番に読んではダメ
【2年目の春】
ある日曜日、「髪を切ってくれ」と立三さんが連絡してきて、例によって午前11時に、店に現れた。
どっかりとバーバーチェアに座った立三さんは「あれから何した?」と言った。
「マイケル・ポーターの本を買ってきて、毎日少しずつ読んでいます」と答えた。
「見せてみ」と立三さんが言うので、持ってきていた本を渡した。
「へー、『競争の戦略』。親本を買ったんか? これ、500ページくらいあるで」
「はい」
立三さんは本をパラパラめくりながらつぶやいた。
「あちゃー。これは、最悪の読み方やな」
「へ?」
「君の読み方は、頭から順に赤ペンで線を引きながら丁寧に読むやり方やろ」
「いえ、オレは蛍光ペンを使ってます」
「あほ、おんなじや!」
「すいません」
「こういう読み方は疲れるし、理解できへん。ええことなんにもない」
「じゃあ、どうしたら……」
「あのな、読書で大切なんは『全体から部分』を常に心がけることや」
「全体から部分すか?」