今はいろいろな生き方の選択肢があり
自分で好きなものを選べる時代
藤野 よく会社をスパッとやめられましたね。
ちきりん もともと私には60歳まで働くという感覚はなくて、ずっと前から「20年働いて20年遊ぶ」というバランスがいいなあと思っていました。
「35年ローンで住宅を買う」というような無茶な無駄遣いをしなければお金は貯まります。だから、あとは好きなことだけをやる人生にしようかなと。お金にもキャリアにもあまり執着がないんですよね。困ったらまた働けばいいだけだし。ということで、いまは毎日チンタラ過ごしています。
藤野 チンタラですか……。楽しそうですね(笑)。でも意外と忙しそうでもあるし。
ちきりん そうなんですよね(笑)。働いていた時はワーカホリックと言えるくらい働いていたので、その時に比べれば今はとても暇です。
でも自分が期待していた「プータローになってチンタラ生きる」いうイメージから比べると圧倒的に忙しくて、「これは一体なんなんだ」という感じもあります。
もちろん、お仕事をいただけるのは有難いとは思うんですが。
藤野 ブログ更新とか、ほかのサイトへの寄稿とか、本の執筆とか、たしかにお仕事されていますよね。
ちきりん 私、文章を書くのは昔から好きなんですけど、楽しく文章を書ける時間というのが1日2時間くらい、1週間で10時間くらいと、だいたいの目安というか限界みたいなのがあって、それを超えると楽しく書けません。仕事として書くならもっと長くがんばれるのでしょうが、楽しく続けられる範囲で、書いていきたいんですよね。だから、執筆のご依頼をいただいた場合も、その範囲を超えないように気をつけています。
藤野 楽しんで書いていることは、ちきりんさんの本を読んでいても感じます。この『自分のアタマで考えよう』は、知らない間に誰かの理想とか、考えや価値観に縛られて生きているんじゃないか、ということを気付かせてくれてくれる本ですよね。そうした生き方に対して疑問を投げかけるちきりんさんの姿勢に共感できます。
結局、知らない間に既成の考えや価値観に縛られているという点がすごく大切なところで、そうした枠をとっぱらって考えれば、今の時代はすごくチャンスに満ちていると思うんですね。
「日本はダメだ」と嘆く声ばかり聞こえますが、実は自分の見方次第でオポチュニティ(機会)に満ちているんだということを、私もぜひ元気のない若者や大人に伝えたいんです。
私の専門である株式投資に関しても、大企業ばかり見ていると株価も下がったり、破綻したりダメそうに見えるけれど、よく見ると、若くて小さくても頑張っている会社はたくさんあります。一つの価値観や生き方だけが正しいというわけではなくて、選択肢があるということかすごく大切なことだと思うんですよね。
ちきりん 既成の価値観に縛られるのではなくて、多様な選択肢があり、その中から自分で好きなものを選べるという状況って素晴らしいですよね。しかも今の時代は、自分の考え方次第でそういう選択をすることが可能になっています。自分が会社を辞めてこういう生活をするのも、自分で選んだ選択です。
私はガーッと集中的に働く人生も嫌いじゃありません。それも全然否定していなくて、人生の中で、がむしゃらに働く時期があってもいいと思います。だから、一所懸命働くことを是とする社風の会社を、なんでもかんでもブラック企業と呼んで嫌がる風潮は疑問に感じます。大事なことは、自分でその生活を選んでいるか、ということでしょう。