日本のサービスは世界に誇れる!

藤野 ちきりんさんは本の中で、今後の日本が進むべき道を英米などと「比較」して分析していますよね。

ちきりん あれは野口悠紀雄先生の本を読んで、その主張を表にしたんです。アメリカやイギリスは、ポスト製造業として金融とかIT産業が発展して経済が立ち直りました。同様に、日本の経済も立ち直る可能性は十分にあると思うんです。それは金融とかではなくて、日本には、どんな産業においてもホスピタリティレベルの高さや、細かい作りこみの素晴らしさがあるわけで、そこがポイントではないかと思っています。

 実際に世界のどこに行っても、日本ほど消費者が快適に買い物ができて、気持ちよくサービスを消費できる国は他にないと思うんですよね。こういう快適なサービスや商品を求める中国人の富裕層とか、アジア人の富裕層とかいくらでもいます。日本人は海外でのマーケティングが下手で、そうした需要と供給がうまく結びつけられていないと思うんですよ。

 レストランのレベルも味もサービスも驚くほど高いし、観光産業にも可能性があると思うし、あとアクセサリーや服とかもそうですが、まだまだいくらでも世界で通用する強みはあると思います。

藤野 それは、私もそう思います。

ちきりん ユニクロの商品だって、あの値段であのクオリティのモノを大量供給できるというのは本当にすごいことです。他のカジュアルウェアの世界大手と比べても、ユニクロはありえないくらい品質や機能が素晴らしいわけです。

 その他の業種でも、日本のこだわりを強みに世界で通用するビジネスが日本から十分生まれえると思っているので、日本の将来はあまり心配していません。

 だけど、政府の産業政策には問題がありますよね。衰退していく産業にエコポイントなどの補助金を出して、税金の無駄だなという感じがします。

藤野 ちきりんさんはブログでも、日本の問題点を厳しく指摘しつつ、日本が好きで日本にずっと暮らしたいということをおっしゃってますよね。

ちきりん はい。私は日本がすごく好きなので、この国にどんなにダメな点があっても出ていく気は全然ないです。病気になっても米国で治療したいとも全く思いません。日本の医療は世界的にみてもすばらしいと思っていますし。

 みんながこの国を逃げ出し始めたとしても、私はおそらく最後に逃げ出す人だよと言ってるんです。こんな良い国を逃げ出して、皆、一体どこへ行くつもりなんだろうと思ってます。

 例えばニューヨークはうるさすぎて、なんであんなちょっとしたことでブーブーとクラクションを鳴らすかなという感じだし、カリフォルニアで一番おいしいと言われているレストランに行った時には「これで一番?」って思いました。

 アジアではシンガポールがいいという人がいますけど、シンガポールに行くと、あまりにも戦略的すぎる国の運営の在り方に、ちょっと辟易としてしまいます。

藤野 管理されすぎた国ですよね。「明るい北朝鮮」とも言われてる(笑)。

ちきりん そうそう! シンガポールは小さい都市国家なので、あそこまで成功するには、徹底的に戦略的にやらなければならないことはよくわかりますけど、日本がそんなことをする必要は全然ないと思うんです。日本をシンガポールみたいにしろとかいう意見に対しても「お願い、そんなことしないで!」と切実に思います。

 ヨーロッパもたまにいくのはいいですけど、長くいるとイライラしちゃうことが多いんですよね。お店やホテルなどで「早くやってよ!」と言いたくなる人がたくさんいて、私にはテンポが合わないです。

 なので、美術館巡りとか、南国のビーチとか、旅行に行くのにすばらしい国は世界にたくさんあるんですけど、暮らす場所としてはどう考えても日本ほど良い国はないでしょう、という感じです。