上司を説得したい、部下をうまく動かしたい、パートナーの機嫌を損ねずに話したい――そんなときに役立つ最強の「伝える技術」がある。それが、レトリック。レトリックは、アリストテレスからオバマまで2000年にわたって世界のリーダーが使ってきた技術であり、最近欧米でもにわかに注目が集まっている。ハーバード大学の必読図書トップ10に選出され、世界13か国で翻訳、アメリカ国内でも30万部のベストセラーとなっている『THE RHETORIC 人生の武器としての伝える技術』(ポプラ社)のなかから、レトリックの基本ともいえる3つの最強の技術を紹介する。

NASA、米国国防省などでコンサルティングや講演をおこなう著者が直伝。ハーバードの学生もこぞって学ぶ、最強の「伝える技術」とは

アリストテレスの3つの最強の技術

息子のジョージが7歳のとき、真冬にどうしても半ズボンをはいて学校へ行くと言ってきかないことがあった。私たちが住んでいたのは寒さの厳しいニューハンプシャー州で、この時期は校庭一面がふわふわの雪で覆われる。妻は「あなたが言ってきかせて」と私に言った。
そこで、私が息子に話をした。せっかくレトリックを学んでいるのだから、アリストテレスが提唱した、3つの最強の伝える技術を使うことにした。

・語り手の「人柄」による説得
・話の「論理」による説得
・聞き手の「感情」による説得

私が最初に使ったのは、語り手の「人柄」による説得だ。厳格な父親という役割を演じてみた。

私:つべこべ言わずに、長ズボンをはいていきなさい。
ジョージ:どうして?
私:父さんがそうと言ったら、そうなんだ。