最近は政治や経済政策絡みのことばかりを書いてきましたが、実は今年後半から、マスメディア/コンテンツ産業とネットの関係が大きく変化する兆候が出ています。2010年はネット上の常識が変わる年になるかもしれないのです。今年も最後ですので、この点について総括しておきたいと思います。
今の競争構造ではメディアは
ネット上で課金しても儲からない
これまで何度か書きましたが、ネットが普及し出してからマスメディア/コンテンツ産業の収益は急速に悪化しました。それは、ネットが視聴者と広告の両方を奪ってしまったからです。
マスメディア/コンテンツ産業は基本的に垂直統合型のビジネスモデルであり、自社でコンテンツの制作から流通までを牛耳ってきました。そこでは、コンテンツの制作力もさることながら、媒体毎のコンテンツの流通独占が収益の源泉となってきました。
しかし、ネットという新たなコンテンツの流通網が普及したことで、マスメディア/コンテンツ産業は流通独占を喪失して収益が悪化したのです。かつ、それらの産業の企業はネットに積極的に進出したのですが、収益改善にはほとんど貢献しませんでした。その理由は大まかに言って二つです。
一つは、ネット・サービスのレイヤー構造の中でマスメディア/コンテンツ産業はコンテンツ・レイヤーに属するのですが、ネット上でのコンテンツの流通独占はプラットフォーム・レイヤー(検索サービス、SNSなど)に奪われてしまったため、現状のままでは広告・課金のいずれのビジネスモデルを採ってもネットは儲からない、ということです。
もう一つは、ネット上ではコンテンツは無料という意識が根付いたことです。違法ダウンロードの氾濫はその典型です。加えて、検索サービスが検索結果にネット上の新聞記事を掲載するときも、記事を一時的に複製するにも関わらず新聞社の許諾を得ず対価も支払わないことが当たり前となっています。
つまり、マスメディア/コンテンツ産業にとってネットは儲からない場所になってしまったのです。しかし、今年後半になって、こうした状況を変えようという動きが活発化しています。