ボクはドアの前でひと呼吸すると、ゴミ収集場所へと向かった。

 あれ?
 今のハキームさまの行動こそ、おじいが言っていた自力本願じゃないかな?

おじい「学ぶべきことをしっかり学ばせてくれるご縁だな」

タイチ「本当にボクにとって必要な展開を用意してくれるんだね」

 そう言うと、おじいはボクの頭の斜め上方で、大きくうなずいた。

タイチ「ハキームさまに出会えて、どんなことでも手を抜かず意識してすることの大切さが学べたよ」

おじい「人はつい、現実をないがしろにする傾向があるからな」

タイチ「現実と理想のギャップってやつね。
 ボクの場合だったら、借金を返すことが先決なのに、ありえない理想ばかり肥大化して仕事を選んだり、ボクがしたいのはこんなことじゃないと思ったりしていたもの。いや、今もそう思っている節がちょっとある」

 おじいの前でカッコつけても仕方がないと思って、すぐに訂正した。

おじい「そういうことだ。人生の好転も成功も、責任を果たすことで得られる結果だ。
 他がどんなに完璧でも、責任を認めなかったり責任転嫁したりすると、結果まで至らない。だから失敗する。
 結果が出るということは、そこに責任が伴うということを忘れるなよ」

タイチ「まずは、自力本願。しっかりと理解できたよ」