その後B部長は就業規則の記載内容について確認すると、降格に関する記述欄を見つけ、さらに調べていくと、過去に部長から課長に降格したケースもあった。

 ところが人事考課については、記述が残されていなかった。なぜなら明確な基準はなく、年功序列と社長の「鶴の一声」で決めていた部分が大きかったからだ。

 以上のことから、過去の事例があっても、A課長を今すぐに降格させるのは難しいと判断した。

部長は課長対策に
いい考えが浮かぶ

 そこで、B部長はA課長に、課長としての教育を受けてもらうことにした。その際、研修講師は誰が務めるのか。本来はB部長が適任だが、課長が受講を拒否する可能性がある。その場合、「上司の指示に従わない」ことより懲戒規程で罰することは可能だが、かなり手間を取ることが予想された。するとB部長はある考えを思いついた。それは講師を専務にすることと、受講を社長命令にすることだった。

 数日後、B部長はA課長を呼んで話した。

「A君。君には専務から営業課長としての職務内容とパソコン操作に関する研修を受けてもらいます。早く一人前の課長となれるようにしっかり勉強してきてください」
「そんな……、私はパソコンなんてできません!」

「いいえ。課長職を続けるためには研修は必須です。これは社長命令ですよ」

 A課長は「社長命令」と言われたことで、しぶしぶ研修を受けることにした。

 その後、元営業部長でもある専務の下で3日間、マンツーマンで営業課長としてのイロハとパソコンをしっかり叩き込まれた。専務にはパワハラ的な口調や指導にならないよう、事前にお願いし、了承してもらっていたのである。

「専務、こんなのできません。これパワハラじゃないですか?」
「努力もしないで何がパワハラだ。私は仕事やパソコン操作の手順を一から順序立てて教えているだけだ。これで『パワハラだ』と言われたら、社員は全員がパワハラ被害者だぞ」

 A課長は不満顔を見せる。すると、専務が言う。

「ん?何か不満か?」

 形勢が不利になったと感じたA課長は何も言い返せない。

「(別の研修も思いついて)そうだ!君にはパワハラ研修も必要だな。もう3日間延長だ!頑張れよ!社長も期待しているぞ!」

 A課長は、泣きそうになりながら、弱々しい声でつぶやいた。

「トホホホ……給料が大幅アップになって、もっとおいしいものが食べられると思ったけど、仕事がこんなに大変だなんて。課長なんかになるんじゃなかった……」

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。