上司を説得したい、部下をうまく動かしたい、パートナーの機嫌を損ねずに話したい――そんなときに役立つ最強の「伝える技術」がある。それが、レトリック。レトリックは、アリストテレスからオバマまで2000年にわたって世界のリーダーが使ってきた技術であり、最近欧米でもにわかに注目が集まっている。ハーバード大学の必読図書トップ10に選出され、世界13ヵ国で翻訳、アメリカ国内でも30万部のベストセラーとなっている『THE RHETORIC 人生の武器としての伝える技術』のなかから、聞き手に好感を持たせる技術を紹介する。

NASA、米国国防省などでコンサルティングや講演をおこなう著者が直伝。ハーバードの学生もこぞって学ぶ「聞き手に好感を持たせる技術」

リーダーは「リーダーにふさわしい」振る舞いをする

聴衆が同意したくなるエートス(人柄)とは、「リーダーにはこうあって欲しい」と誰もが期待するとおりの口調、見かけ、振る舞いをしてくれる者である。古代ローマ人は、その人の人柄ゆえに同意してしまう現象を説明するために、「ディコーラム(適切さ)」という言葉を編み出した。

「ディコーラム」とは、「相手に合わせる」技術を指す。礼儀正しい相手に囲まれているときだけではない。職場であれ近所のバーであれ、どんな場所でもその場にふさわしい言動をすることである。

「ディコーラム」というラテン語には、「適合する」「ふさわしい」という意味がある。進化と同じで、議論の世界も“適者生存”だ。大きな社会であれ小さな社会であれ、それこそ運動場であれ会議室であれ、その場で成功を収めているのは、最もうまくその場に適合した者なのである。