「顧客ずらし戦略」とは、スキル等を含めた自社の本質的なアセット(資産)を見つめ直し、新たなビジネスを展開して、これまでとは異なる顧客をつかまえること。ボディメイクにとどまらず、ゴルフや英語、料理など提供するサービスを次々と拡大するライザップの戦略も、巧みな「顧客ずらし」に基づいている。(フィールドマネージメント代表 並木裕太)

RIZAPの瀬戸健社長
ライザップの瀬戸健社長 Photo:Rodrigo Reyes Marin/AFLO

事業の中心はフィットネス事業
目的は「健康的にお痩せいただくこと」

 さえない表情でたるんだお腹をさすっていた老若男女が、数ヵ月後、別人のように引き締まった肉体を手に入れる──。CMのインパクトも手伝って、「ライザップ」の名は瞬く間に世間に知れ渡りました。いまではボディメイクにとどまらず、ゴルフや英語、料理など、同社が提供するサービスは拡充の一途をたどっています。そればかりか、今年4月にはJリーグ・湘南ベルマーレの経営権を取得することも発表されました。

 こうした事業展開は、本連載で紹介してきた“顧客ずらし戦略”に合致するものと言えます。

 同社の根幹をなすアセット(資産)とは何なのか。そして、それをどのように“ずらし”ているのか。ライザップ創業者、瀬戸健社長の言葉を借りながら、同社の顧客ずらしをひもといてみましょう。

 事業の中心は言うまでもなく、専属トレーナーが専門的かつ徹底的にサポートすることで健康的なボディメイクを実現するというフィットネス事業です。この事業を行う上で大切にしている視点を、同社社長の瀬戸健氏はこう説明します。

「創業の頃から意識してきたのは、目的と手段を明確に分けるということです。ライザップは『パーソナルトレーニングを広めようの会』でもないし、『糖質制限を広めようの会』でもありません。目的はあくまでお客様に健康的にお痩せいただくことであって、パーソナルトレーニングや糖質制限といったことはそのための手段でしかない。これまでに10万人以上のデータを分析してきましたが、情報を常にアップデートすることで最先端のサービスを提供できるわけですから、より有効な手段が見つかったなら速やかに変えていくべきです。ともすると、人や企業は、目的を見失って手段に固執してしまいがち。そういう会社にならないように、社員たちに注意喚起することもありますね」