その後、「就労可能、病気による支援手当の受給資格なし」という審査が下りますが、医師からは仕事を控えるように言われていたため、納得できないダニエルは役所のコールセンターに電話します。

 すると、「しばらくお待ちください」という趣旨のメッセージとメロディーが延々と流れ続け、1時間48分も待たされます。ようやく電話がつながったかと思うと、受給資格を評価する採点基準に従って12点だったので、受給に必要な15点を満たしていないと事務的に説明されます。つまり、「働けるので給付できない」と判定されたわけです。

 しかし、ダニエルは医師から「働けない」と言われているわけなので、納得できません。そこで、役所に足を運んで相談すると、申請はオンラインだけと言われ、パソコンを使えないダニエルは一苦労。

 結局、アパートの隣人から支援を受け、何とか不服を申し立てるとともに、当座のつなぎとして「求職者手当」を請求すると、今度は給付の条件として窓口の職員から週35時間の就職活動と証明を求められるだけでなく、履歴書の書き方講座に出るように勧められます。ここでもダニエルは不満を持ちつつ、言われた通りにします。

 すると、数日後に園芸センターのハリーという男から電話がかかってきます。履歴書を持参してめぼしい事業所を歩いた際、知り合った男性です。

ハリー 「ここ数週間の履歴書を読み比べたら、あんたの経験が際立っていた。あした面接に来られるか?」
ダニエル 「すまない。医者から仕事は止められているんだ」
ハリー 「じゃなぜ仕事探しを?」
ダニエル 「事情があるんだ」
ハリー 「何のために履歴書を渡した?」
ダニエル 「給付を受けるためだ」
ハリー 「給付?働くより福祉を?実直な男と見込んで雇う気でいた。履歴書を比べてな。とんだ無駄骨だ。ふざけるな」

 さらに、役所で求職活動をやったことを説明しても、窓口職員から「領収書などの証拠は?」と問い詰められたり、求職活動していないと判断されたことで4週間の支給停止と違反審査を宣告されたりします。こんなことが積み重ねり、ダニエルはついに給付申請をあきらめます。その時のセリフです(途中省略している部分があります)。

「とてつもない茶番だ。体を壊した俺は、架空の仕事探し。どうせ働けない。俺も雇い主も時間のムダ。あんた(注:応対する役所の女性)もそうだ。俺には屈辱でしかない。ほぼ拷問だ。データから俺の名前を消すためか?求職者手当はやめる。もうたくさんだ。俺は限界だ。尊厳を失ったら終わりだ」