「周囲の人と助け合わずに自分だけ逃げるのか」という批判も出そうだが、倫理的な議論を脇に置き、身の安全を第一に考えた場合、各々にとってこれが最も現実的な行動なのだという。

 しかも重要なのは、逃げる際に振り返ってはいけないことだ。理由は、振り返って通り魔と目が合うと追いかけてくる場合があるからだという。

 では、新幹線の通路など狭い場所の場合、前を逃げる乗客が振り返ってしまったらどうなるのだろう。専門家の回答は、「だからそうなる前に、まっ先に逃げるんだ」というもの。大事なのは瞬時の判断である。逃げる乗客でパニックが起き、前方が詰まってしまったらもう逃げられない。仕方なく座面を盾にして、犯人に立ち向かわなければならなくなる。最初の避難で差がつくというのだ。

周囲の人々の「スマホ」が
最大のリスク要因になる?

「まっ先に逃げろ」という当たり前とも思える教えには、もう1つ重要な教訓がある。街中で通り魔事件が起きたような場合、現代社会ではスマホを取り出して撮影を始める人も出てくる。非常時に「スクープをものにしたい」という群衆心理は大問題であるが、何より逃げる人にとっては邪魔になる。自分の身が危険に晒されているときは、スマホに囲まれる前に一足早く逃げなくてはいけないのだ。

 さて、今後の対策という面で、JRにはもう1つ考えておくべきことがあるという。日本は銃社会ではないため、「凶行の大半は刃物で起きる」という現実である。今回の事件が起きる前日の6月8日は、奇しくも秋葉原無差別殺傷事件(2008年)と附属池田小事件(2001年)という、2つの殺傷事件が起きた日にあたる。

 刃物を振り回す犯人を取り押さえなければならなくなったら、どうすべきか。新幹線の中だけでなく、街中ないしは学校のような場所で子どもが襲われるような状況になり、逃げずに立ち向かわなければならないという事態も起こり得る。

 基本的に刃物に対抗するには、犯人と距離を置くことができるものを使うべきだという。今回の事件では、スーツケースを使って犯人を追い詰めたという情報もある。