ところが日本は、その予想を完全に覆した。コロンビア戦は2-1で勝利。第1戦でランク8位のポーランドを破って勢いに乗るセネガルとも対等以上に戦い引き分けた。とくにセネガル戦は両チームが持ち味を生かして攻め合う見応えのある展開になり、欧州のメディアからも「グループリーグのベストゲーム」と讃えられたほど。日本代表の戦いぶりはサッカー通の常識を超え、感動を呼び起こしているのだ。

 FIFAランクを基準にすれば、日本代表はここまで下剋上を果たしていることになるが、今大会は同様のケースが数多く見られる。

 グループリーグを勝ち抜いて当然と思われていた強豪の苦戦が続いているのだ。

 前回のブラジルW杯で優勝し、FIFAランクでも1位のドイツは第1戦のメキシコ(15位)戦を0-1で落とすという最悪のスタートを切った。第2戦のスウェーデン(23位)戦も引分けに持ち込まれそうになったが、終了間際に勝ち越し薄氷の勝利。これでグループリーグ突破は見えてきたが、前回の優勝メンバーが9人残っているチームにしては危なっかしい戦いを見せている。

 前回の準優勝チーム、アルゼンチン(5位)は目も当てられない惨状に陥っている。第1戦でアイスランド(22位)と引き分け、第2戦のクロアチア(18位)戦は0-3と惨敗。勝点はいまだに1でグループDの最下位に沈んでいる。第3戦のナイジェリア(47位)戦に勝ち、アイスランドがクロアチアに引分け以下ならグループリーグを突破できるが、エースのメッシが精彩を欠くうえ選手が監督批判をするなど、チームとしてのまとまりを失っているため、敗退の可能性も十分ある。

 ブラジル(2位)も王者らしからぬ苦しい戦いを強いられている。第1戦はスイス(6位)と引き分け、第2戦もコスタリカ(23位)と危うく引き分けるところだった。後半ロスタイムに2点を入れて貫禄を示したものの終了直後、2点目を入れたネイマールが号泣した姿には追い詰められた心情が表れていた。ブラジルは問題なくグループEを勝ち上がるだろうが、強豪だからといって楽に勝てるものではないのだ。

波乱が起きやすいサッカー
強豪が「屈辱の敗北」も

 サッカーは他のスポーツに比べ、こうした波乱が起こりやすい。ボールを手で確保することができず、常に奪い合う状態にあるから、個の技術だけでは試合を支配することができない。チームのメンバーが心をひとつにして、互いをフォローしあわなければ、思い通りのプレーはできないのだ。

 そのプレーも心理状態に左右される。心理的に余裕がある時は創造性のあるプレーが生まれて優位に立てるが、精神的に追い詰められるとチームの歯車は狂いミスも出るようになる。戦術によって良い流れをつかみ、相手の焦りを誘うことができれば、弱者が強者を上まわることも可能だし、それによってどんな強豪でも信じられない負け方をすることもある。

 強豪の信じられない負け方で思い出すのが前回大会の準決勝、ドイツ―ブラジル戦だ。どちらもW杯では輝かしい実績を誇る強豪で、すばらしい試合になると誰もが期待したが、前半11分にドイツが先制して以降は、一方的な試合となり、なんと7-1でドイツが大勝した。負けたブラジルにしても準決勝まで勝ち進んでいるのだから、チーム状態は良かったはずだが、どこかで歯車が狂い、選手の気持ちが切れてしまったのだろう。

 ブラジル国民は当然ホスト国の優勝を願っていたから、惨敗の衝撃は大きかった。同国メディアは「史上最大の恥」、「歴史的屈辱」、「ブラジルは殺された」とまで酷評したが、国民も同様の思いで打ちのめされた。こういうことが起こり得るのもサッカーなのだ。