さらに貿易問題ではもっと譲歩を迫られた。トランプ大統領は対日赤字に触れ、貿易の不均衡を問題にした。安倍首相が「軍用機やボーイング製の航空機、農産物を含め日本は数十億ドル規模のあらゆる米国製品」を購入していると述べたのに対し、トランプ大統領は自動車貿易の不均衡を持ち出したという。

「われわれはミシガン、ペンシルベニア、オハイオの各州で新たな自動車工場が欲しい」。この唐突な「要請」に対して、安倍首相は対米投資を約束したかのように、メディアで報じられている。日本にとっては、安倍訪米はまさに「やぶ蛇」だった。

 その後、カナダで開かれたG7サミットでも、英BBCによれば、安倍首相は「米国の高い関税に対する報復措置に参加するよう、他のG7各国から強く求められ、難しい立場に追い込まれた」という。

 また移民問題の議論の場面では、トランプ大統領は安倍首相に対して「私が(日本に)メキシコ人を2500万人送れば、君はすぐ退陣することになるぞ」と暴言を吐かれたとも報じられている。

 もはや米国大統領との蜜月関係を演出するだけの「物言わぬ外交」では、「ポピュリズム」と「ビジネスマン的なディール」手法に基づく「米国第一主義」のトランプ外交に通用しないことは明らかだ。

 国際的に通用する論理で主張すべきは主張し、その主張の正当性で競い合う政治姿勢が必要となってくる。だが安倍政権にそうした政治姿勢が生まれる見込みはなさそうである。

(立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授 金子 勝)