しかも、自社に戻って人事部長に「こういう話を聞いたよ」と伝えたら、「僕もその人の記事や本を読んで、働き方改革を原さんに提案しようとしていたところなんですよ」となって、そこからはトントン拍子に話が進んだんです。

小室 それは光栄なお話です。とはいえ他社では、人事の担当者が「働き方改革を進めなきゃいけない」と課題意識を持ち、本を読んで研究してから役員層にプレゼンをしても、「けんもほろろ」という話をよく聞きます。それなのに、原さんも人事部長も課題意識を持って社外の動きに敏感に反応されていて、すごいですね。

「店にいるのが楽しい」
という文化からの脱却

小室 ところで原さんご自身は、これまでどのような働き方をされてきたのでしょうか。

原裕章(はら・ひろあき)
株式会社シップス代表取締役副社長。1960年東京都生まれ。学生時代のアルバイトを経て1983年に入社。以来、シップス一筋でキャリアを積み、現職

原 アルバイト時代は、お店に行ってもタイムカードを切るわけでもなくて、「お金にならなくても働くのが楽しい」みたいな感覚がありました。おそらく今の社員の半分くらいには、「たくさん働くのが美徳」みたいな意識がまだ残っているのかな、と。正直に言うと、まだ自分の中にも少し残っているかもしれません。

小室 「仕事こそが人生」みたいな状態ですね。

 働いている人間が苦を感じていない。これは逆に言うとやっかいな問題です。我々は、基本的に自分の好きなものに囲まれて仕事をしています。

「服に囲まれているのが好き」「店にいるのが楽しい」「お客さまと話をするのが楽しい」と考えているので、長時間労働があまり苦になってないからこそ難しい。苦に感じているほうが変えやすいと思うんです。

 さらに、駅ビルやショッピングセンターに入っている店舗は、営業時間が決まっているので、自分たちで残業時間をコントロールするのが非常に難しい。夜10時まで営業している駅ビルもあったので、スタッフが家に帰るのが毎日12時過ぎになる。こういった中で、働き方改革に取り組むことは非常に難易度が高かったですね。