小室 でも見方を変えると「自分自身が買い物もできないような日々で、お客様にどう買い物の提案ができるの?」ということですね。

 そうなんです。ファッションは文化でもあります。映画や音楽、美術などにもつながっているので、文化に対する見聞を広めることはお客さまとの会話にも生きてくる。文化に触れる生活をしてほしい。そういう思いがありました。

「早く帰る」という目標ではなく
定時までに売り上げを達成すること

小室 実際に働き方改革がスタートしたときには、社内から色々な反発があったのではないですか。

 店舗では、「お客様がいる限り仕事をしなきゃいけないので、難しいんじゃないか」という声が多かったですね。「お客様のために残業しているのに、どうしろというのか。早く帰るための活動は負担だし、興味がない」というような反応でしたね。

小室 これは本当によく起こる議論ですね。そんな中で、具体的にどのように取り組まれたのでしょうか。

 全国の店長が、一番関心が高いのは「売り上げを上げる」ことです。そこで「どうやったら早く帰れるか」ではなくて、「どうやったら売り上げを上げるマネジメントができるか」について考える研修からスタートしました。

 その研修では、今何が足かせになっているのか課題を出し合わせました。すると、ほぼ全員から上がったのが「店舗スタッフのモチベーション」の問題でした。どうしてモチベーションを上げられないのか掘り下げて議論していくと、どうやら店長たち自身のコミュニケーションに問題があることが見えてきたんです。

小室 モチベーションを下げるようなコミュニケーションをしてしまっていたんでしょうか。

 1回の研修ですぐに気づいたわけではなかったのですが、店長同士が集まって研修を受けながら付箋で意見を出しているうちに、良かれと思ってやっている自分たちのコミュニケーションは「指示命令型」で、スタッフたちの思考を奪ってしまうようなやり取りが多かったことに気づいたんですね。